マスコミ衰退を憂う人に伝えたいニュースの未来

溢れんばかりの課題は同時に可能性を指し示す

それでも希望はある!(写真:Princess Anmitsu/PIXTA)
新聞は若い世代に読まれず、テレビは視聴者離れを憂い、綺羅星のようなライターを生み出してきたいくつもの雑誌の休刊が相次いでいる。
コストがかかる、という理由で十分な取材費も出せず、ニュースを巡る環境は悪くなっていくばかり……と誰もが思っているなか、本当に希望はないのか。
これらのメディアの未来とは? インターネットメディアの功罪を踏まえながら、ニュースの本質を追ったノンフィクションライター、石戸論氏の新刊『ニュースの未来』から一部を抜粋、再構成してお届けします。

情報過多が質の高い情報の喪失を招いた

本当らしい嘘が影響力を持つ時代にあって、ニュース業界の人々はいかにフェイクニュースに対抗するかを語り合っています。「ファクトチェックをしよう」「デマを許さない」とキャンペーンを張ろうといった具合です。

それはそれで大いに結構なのですが、僕にはそれだけでいいのだろうかという疑問が常にありました。チェックをすればフェイクを信じている人は「正しいニュースに触れた」と思うのでしょうか。二項対立的な分断を乗り越えて、課題解決に向かっていくのでしょうか。

もちろんファクトチェックには一定の意義はあります。やらないよりはやったほうがいいのですが、それだけで問題は解決しないというところに現実的な問題があります。人間の認知をめぐる心理学の研究や社会科学の分野から出ている研究を読んでいると、人は見たいものを見て、共通点のある人とつながりたがり、SNSを含む周囲の人たちからでも人間の感情は伝染しやすいことがわかっています(笹原和俊『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』)。

少なくない人々は、明確な間違いを指摘されても、自分の世界観に合わなければ、自らの世界観にさらに固執するというバイアスも持ち合わせています。

インディアナ大学のフィリッポ・メンツァーらによる「SNSがしょうもない情報であふれるメカニズム」(『日経サイエンス』2021年8月号)という論考があります。そこで指摘されているのは、情報過多が質の高い情報の喪失を招いたというエビデンスです。

彼らはシミュレーションによる研究結果を踏まえて、「人々が高品質の情報を得てシェアしたいと思っていても、ニュース配信すべてに目を通すことができないために、部分的あるいは完全に間違った情報のシェアに必然的につながってしまうことが明らかになった」と指摘します。

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