「タリバン」こんなにも早く権力掌握できた事情 女性を抑圧した20年前の「悪夢」が再来か

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パキスタンの情報機関、軍統合情報局(ISI)は、その後もタリバンと関係を保ってきたといわれる。宿敵インドに対抗するため、タリバンを通じてアフガンに影響力を確保するのが狙いだ。今回のタリバンの快進撃でも、ガニ大統領らはパキスタンがタリバンを支援していると非難していた。

パキスタン国内に問題が跳ね返ってくる危険もある。アフガンの動きは、タリバンと近い関係にあるパキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)の活動活発化につながる恐れもある。タリバンの復権に刺激されて軍や政府を狙ったテロを活発化させかねない。ただ、パキスタン政府としては、アフガンのタリバンを通じて、TTPに自制を働きかけやすくなるとの読みもある。

一方、軍を撤退させるアメリカにとって、アルカイダなどのテロ組織の監視を含めたアフガン情勢を把握するためのパキスタンの重要性は増す。このため、パキスタンはアメリカからの軍事支援の拡大を期待できるとの読みもあり、タリバン復権の損得勘定を計算しているのではないか。

気になる中国とタリバンの関係

中国も勝ち組に回りそうだ。タリバンは、前政権時のように国際社会から孤立するという事態は避けたい。7月下旬、タリバン代表団が中国を訪問し、王毅国務委員兼外相と会談している。

タリバンと中国の間では、道路網整備などの投資案件も浮上しており、タリバンにとって中国は、国際社会での孤立状態を緩和する救世主になり得る。イスラム独立運動を抱える中国も、タリバンとの関係は治安面で大きな意味を持ち、ウィンウィンの関係になりそうだ。

タリバン政権の復権は、国際テロの脅威を高めるなど国際社会にも影響が及ぶだろう。バイデン大統領がアフガンからの撤収を覆さなかったのは、「アフガンからアメリカに及ぶ脅威は駐留軍なしで対処できる水準になった」(アメリカ政権高官)と、国際テロの脅威が大きく減ったことも理由とされた。

現在、アフガンに潜伏するアルカイダ活動家の数は200〜300人と推定され、アメリカ治安当局は、国際的なテロを企てる能力はないと判断している。だが、タリバン政権になれば、アメリカによるアフガン国内での情報収集や掃討作戦の実施は困難になり、アルカイダなどの過激派が勢力を盛り返すのではないかとの懸念は拭えない。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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