「タリバン」こんなにも早く権力掌握できた事情 女性を抑圧した20年前の「悪夢」が再来か

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アフガンの陸軍や空軍、治安部隊などは計30万人以上で、6万人の戦闘員を抱えるタリバンに対して数字面で圧倒している。しかし、「国軍は寄せ集めで軍閥や部族への帰属意識が抜け切れず、国軍としての統一感に欠けて士気も乏しい」(専門家)。タリバンの攻勢を受けて、早々に敗走する兵士の様子がSNSに投稿された。

これに対し、タリバンは政権打倒で団結したほか、空軍パイロットを暗殺するなどゲリラ戦術で空軍力を弱体化させ、装備での劣勢を跳ね返した。パキスタンなどからの外国人義勇兵も加わっているとの情報もある。

20年でタリバンは変わったのか

アメリカ軍は2001年、タリバンがアメリカ同時テロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者をかくまっているとして、アフガンに侵攻。タリバン政権はそれまで、イスラム法に基づく統治を行っていた。

アフガン農村部の男尊女卑的な習慣とも相まって、そのイスラム法の解釈は厳格で、女性の教育を認めなかったり、不貞行為に対して石打ち刑を科したりするなど現代社会の人権感覚や価値観と相容れない恐怖支配を敷いた。

政権打倒から20年を経て、タリバンは思想的に変化したり、穏健化したりしたのだろうか。

タリバンは、カタール・ドーハに政治事務所を構え、アメリカ政府と交渉して和平合意を結ぶなど正統性を高めてきた。今回の局面でタリバンは、国際社会の懸念に呼応するかのように、武力で権力を奪取せず、交渉による権力の移譲を目指す姿勢を示していた。前政権時代の教訓から学び、国際社会を意識した言動も一部で見受けられる。

だが、タリバンのイスラム思想は変わらないだろう。アメリカの介入でアフガンが民主化することはなかったが、少なくとも女性の人権や教育をめぐる状況は改善して、女性の社会進出が進み、少数民族の権利も守られるようになった。

が、こうした20年間の成果は、タリバンの復権によって一気に吹き飛びそうだ。タリバンが進出した地域では、再び女性の教育が禁じられたり、鞭打ち刑が導入されたりしており、女性の全身を覆う衣装ブルカの着用も義務付けられているとの話もある。

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