隠蔽された「広島の原爆被害」伝えたのは黒人記者 放射線被害を正確に報じた、ほぼ唯一の米国人
核爆弾が爆発すると2種類の放射線が放出される。まず、最初の数秒で膨張する火球とともに中性子とガンマ線が激しく飛び散る。その勢いは強力で、何マイルも空中を高速で移動した後でさえ、鋼鉄やコンクリート、人体を貫通できるほどだ。
放射線は染色体を破壊し、人体の細胞機構に多大な影響を及ぼし、これが病気やガンを引き起こし、人を死に至らしめる。ただ、こうした放射線は瞬時に消えるため、直接計測することは難しい。
これに対し2つ目の波は、より持続的で検知しやすい。核燃料の原子が分裂するとストロンチウム90やセシウム137といった何百種類もの核分裂片が生まれ、何年にもわたって危険な放射線を放ち続ける。キノコ雲に乗って上級へと舞い上がったこれらの放射性粒子は、風に流されて何マイルも移動し、放射性降下物となって地上に降り注ぐ。そこに放射性粒子があるかどうかは、ガイガーカウンターを使えば簡単に確認できる。
アメリカの調査団は広島で検知可能な放射性降下物の存在を確認している。しかし、その場所は爆心地ではなかった。科学者は、風下の広島周縁部やうっそうとした竹林に向かって微弱な放射能の痕跡が続いているのを発見した。
ニューメキシコ州と日本の核爆発現場を記者に取材させたグローブスらは、ガイガーカウンターが示す低い数値に記者の目を向けさせた。放射線による危険がほとんど存在しない証拠がここにある、というわけだ。
ニューヨーク・タイムズのローレンスが書いた記事には、「ずっとそこに住んでいられる」というグローブスの発言が引用されている。
医学の知識で本質を見抜く
これとは対照的にローブは、爆心地で放射性降下物が確認されなかったという情報ではなく、初期バーストによる火球の放射線に照準を合わせた。ローブが報じたのは、軍医大佐スタッフォード・ウォーレンによる発見だ。ウォーレンは戦前、ロチェスター大学で放射線医学の教授を務めていた。
ウォーレンはマンハッタン計画の医学責任者だった。原爆の製造者たちを放射線障害から守ることがアメリカにおける任務で、日本では日本人被爆者の医学調査を主導した。