ヤマト運輸、人手不足問題に着々と対応 山内社長「運賃適正化を強い意志で進める」

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ヤマト運輸の山内雅喜社長

――陸運業界における人手不足解消の対応策は。

陸運業界が持っている輸送能力を最大限に活用するのが1つ。そのためには、片荷(かたに、幹線輸送において積み荷が片道分しかないこと)のような無駄を極力なくすための共同プラットフォームを、業界で構築することが日本の産業を支えていくうえで求められる。もう1つはダイバーシティによって働き手を増やすための労働環境の改善だ。女性の中にも大型車両のドライバーを希望する人もいる。外国人の活用も課題だ。そのほか、モーダルシフトや機械化も方策の1つ。各社でこれらの取り組みをどう組み合わせるかだ。

1社だけで対応する時代は終わって、業界としてどう対応するかという意識を持たなければならない。例えば、輸送効率を上げるための「ボックス」も各社によってサイズが異なる。こういったものを同一規格で業界標準化を図っていくことも必要だ。また、ITインフラの業界整備も待たれる。情報システムに共有性がないと、業務の一元化はできない。全国物流ネットワーク協会など業界団体が中心となって検討する動きもみられる。

さまざまな方法で人員を確保

――ヤマト運輸での人手不足対応はいかがですか。

集配エリアにおけるセールスドライバーとターミナル拠点での仕分け作業の人員の確保が課題だ。集配エリアでは顧客に直接接する場所なので女性、特に主婦が活躍してくれている。すでに当社では集配を担当する女性が約1万3000人もいる。主婦の場合、地域の中で短時間働いて残業がないというのが働きやすい就労条件だ。今後さらに、セールスドライバーの補助的な役割を担うフィールドキャストとしても、主婦の力は期待できる。

一方、仕分け作業の希望者は短時間労働の希望が多く、フルタイム人員を確保することが難しい。また、体力を使える若者の確保が厳しいので、仕分け現場では機械化を最優先で進めている。最新の搬送機械を導入すれば、2~3割は省力化が図れる。全国に約70ある拠点に順次設備を導入していく計画だ。

それ以外の施策としては外国人の活用だ。現在、中国やアセアン諸国などから1000人超の外国人が働いており、そのための作業マニュアルも日本語を含め6カ国語対応にしている。仲間といかにコミュニケーションを図るかなど、実践的な現場作業を想定したマニュアルの内容を充実させていく。つまり、労働力の確保には全体ネットワーク(物流拠点網)の進化と合わせて、機械化や時間軸、対象者の拡大などの施策を進めている。

――消費増税前の今年3月には荷受け作業が滞り、配送に遅れが出ました。

最終週の荷量は想定を大きく上回ってしまい、輸送キャパシティが十分に確保できずに仕分け作業にもシワ寄せがきてしまった。あらかじめ想定して用意していた体制に対し、実際に扱う物量が極端に多くなり、その波動を吸収できずに混乱してしまったというのが正直なところだ。物量がピークを迎える今年12月に向けてはこのようなことが起こらないように、今からさまざまな準備作業を進めている。

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