ヤマト運輸、人手不足問題に着々と対応 山内社長「運賃適正化を強い意志で進める」

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――7月のお中元シーズンは無事乗り切りましたか。

問題なく乗り切ることができた。取扱数量を想定し、それに向けて春先から用意してきた成果を反映できた。お中元シーズンだけをとれば、人手不足感はない。しかし、これが12月になると、7月の波よりももう一段高くなるため、注意深く準備していく。

――人手不足に伴う労賃アップや燃油費高などによる値上げ交渉が陸運各社で行われています。ヤマト運輸ではどのようなスタンスで臨まれるのですか。

宅急便はすでに社会的インフラだ。その責任を果たすのが私どものミッション。社会的インフラには信頼性と持続性が不可欠だ。信頼性はサービス品質の持続であり、それをしっかりと提供できる環境を構築しないといけない。人の体制、車両や施設、機械化投資など、信頼を持続させるための原資を確保するため「運賃収受の適正化」をお願いしている。お客様に十分なサービス品質を提供し、われわれの責任を果たしていく。

――「運賃収受の適正化」という意味をもう少し具体的にご説明ください。

宅急便では、基本はサイズ別運賃になっているが、大口の法人顧客に対しては、小さな荷物も大きな荷物も60サイズ(3辺の長さが合計60センチメートル以内)の料金で運んでいた。60サイズの物量構成割合と売上計上比率を比べると、2倍以上の差が出ていたケースもあった。今は徐々に縮まってきている。昨年ご迷惑をかけたクール宅急便の温度管理問題の反省もあり、社会インフラとしての責任を果たさねばならないという思いから、強い意志をもって運賃収受の適正化のお願いを進めていかないといけない。

――これまで大幅な割引をしていたのはなぜですか。

荷主確保という厳しい競争条件の中では、価格提示の一本化という形がまだ残っていた。また、かつては比較的大きなサイズが少なかった。個人から企業に利用者層の幅が広がり、納品や部材を運ぶのに使われるようになった。現在は個人から純粋に出ているものは全体の10%ちょっと。8~9割は企業からの荷物だ。それに伴うサイズの大型化が起こった。

品質を社会的インフラとしてきちっと整えようとすると、キャパシティをきちっと把握しなければならない。それには人や車両、施設だけではなく、荷物のキャパシティを考えなくてはいけない。サイズ別にしっかりとカウントされる環境が必要だ。これまでの個数を意識する考え方から、サイズも意識するように転換するときが来ている。

価格改定の交渉は徐々に進んでいる

――運賃収受の適正化交渉の進捗度合いは。

中・小口顧客には半分以上は再契約をすませた。大口顧客はまだ交渉中の段階である。大口の場合はインパクトも大きいため、運賃収受の適正化の交渉も1年くらいかけて行っている。おそらく実際の改定は来春とかになるので、すべての交渉が終わるには2年ぐらいかかる。

顧客からは「うちも大変だけど、ヤマトさんも大変だよね」といった声が多く聞かれる。人手の問題、燃油費の問題を話すと比較的受けていただきやすい。これは、物流業界全体の問題であり、このタイミングで行動を起こさないと日本全体の物流が支えられなくなる。

――中小事業者からは値上げに対して抵抗の声が聞かれます。

極端にサイズと価格がそぐわない顧客に対しては、交渉の最初の頃は当社からのご説明が不十分で「(ご了承いただけないなら)これ以上はお取引が出来ません」といった趣旨の言葉も正直あって、ご迷惑をおかけした。でも今は、もう一度話をさせて頂き、再提案をさせてもらっている。

――人手不足は構造問題です。人件費は当初想定を上回ってきませんか。

今のところ年度計画の想定内で動いている。ただ、これから年末に向けて人件費が大きく変化するかもしれない。それも物流業界だけなら読めるが、建設業や外食産業、小売業などと労働力を奪い合う影響が今後広がっていくと、現状の想定とは大きく異なる様相になるかもしれない。注意深く見守っていく。

鈴木 雅幸 東洋経済 記者

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すずき まさゆき / Masayuki Suzuki
2001年東洋経済新報社入社。2005年『週刊東洋経済』副編集長を経て、2008年7月~2010年9月、2012年4月~9月に同誌編集長を務めた。2012年10月証券部長、2013年10月メディア編集部長、2014年10月会社四季報編集部長。2015年10月デジタルメディア局東洋経済オンライン編集部長(編集局次長兼務)。2016年10月編集局長。2019年1月会社四季報センター長、2020年10月から報道センター長。
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