さようなら、"ミスター牛丼"と呼ばれた男

安部修仁と吉野家の時代

(撮影:今井康一)

2014年8月末、「ミスター牛丼と呼ばれた男」、吉野家の社長、安部修仁が経営の第一線を退く。

ミュージシャンを志して福岡から上京した安部。吉野家のアルバイトから社長にまで上り詰めたあとも、つねに注目を集めてきた。

22年の社長人生で最大の危機は2003年12月24日、クリスマスイブに起きたBSE(牛海綿状脳症)問題だ。2日後には日本政府が輸入を禁止。米国産牛肉にこだわっていた安部は、即座に牛丼販売停止を決断した。BSE発覚から1カ月半、とうとう牛肉在庫が底を突く。

「安部ちゃんさ、米国産にこだわらなくてもいいんじゃない」。モスフードサービス社長の櫻田厚は、安部を食事に誘ってこう助言した。「別の産地の牛肉でも作れるでしょう」。しかし安部は首を横に振ってこう返した。

「あっちゃん、それは無理だよ。他の産地の牛肉を使っても牛丼という商品は出せる。でも、それだと吉野家の味は出せないんだから」。

米国産牛肉の輸入が再開され、吉野家が牛丼の販売を再開したのは950日後のことだ。

「根拠はないけど確信はあった」

安部は当時をこう振り返る。

「実は会社が生きるか死ぬかという不安は微塵もなかった。無借金で、潤沢な自己資金もあったので。牛丼抜きでも半年か1年もあれば、業界のアベレージ並みの利益は出せると……根拠はないけど確信はありましたね」。

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