今回のコロナ禍は旅行業界にとってかつてないほどの衝撃を与えた。これほどまでの規模の事態はなかったとは言え、振り返ってみれば、これまでにも幾度となく旅行業界は大きな危機に見舞われてきた。
過去にも、湾岸戦争やSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行などで、旅行がピタッと止まることがあった。そのときも澤田氏は「需要がない状態が普通なんだったら、何かしようよ」と社員に呼び掛けた。「ですから、HISの社員には少なからず、逆境を力に変える精神が宿っているように思います」(山野邉さん)。
過去に与えられてきた数々の試練と、カリスマ経営者のもと、社員たちが幾多の困難を乗り越えてきた歴史の中で、同社には「変人=変える人」が生まれる土壌が育まれてきたのかもしれない。
会社をテコにせよ
山野邉さんは言う。
「サラリーマンがいいと思うのは、会社を使うことで自分の力以上のことができるということです。これは、本当に魅力です。会社の看板を使えるなら使い倒せばいいんです。
会社のテコを使って実力以上のことをやる。それが醍醐味だと思っています。もちろん、ダメだったらダメで相当痛い思いをしますし、自分がやりたいことをやって会社に損失を出してもいいとは思っていません。
会社に挑戦させてもらえるからには、私自身『絶対返してやるぞ!』という思いでやってきました。幸いなことに、HISという会社には、挑戦させてくれる土壌がありました。そうでなければ、私のような人間がここまで成長させてもらえることはなかったと思います」
かつて、チャールズ・ダーウィンは言った。
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である。
HISという組織の風土は、山野邉さんを変化させてくれた。コロナ禍という歴史的な転換期の中、旅行会社の生き残りをかけ、そして組織への恩返しとして山野邉さんは小さな芽を花に育てるべく奔走を続けている。
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