旅行大手HISで「非旅行業に夢を託す男」の仕事観 51歳法人営業本部長が進む「旅行会社の商社化」

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ただ、そこでへこたれなかったのが山野邉流。法人営業の仕事について、知れば知るほどすごく可能性がある仕事だと思うようになった。メジャー部門と違って、やってもやってもそう簡単に光が当たらない。だからこそ、中にいる人たちは意地がある人、骨がある人、思いを持った人が多かった。このことも山野邉さんに大きな刺激となった。

会社における花形事業、メジャー部門は目立つ。社内ではそこに異動して活躍したいという社員が列を成し、社外からもキラキラして見える。

だが、HIS自体がゼロから大きくなっていったように、最初から花を咲かせていた花形部門など存在しない。最初はどれも種から始まり、なんとか芽を出して、少しずつ茎を伸ばして葉を生やすことができた後、ようやく花が開く。

それに、すでに光が当たっている部門は仕事の型が決まり、自由度が低くなり、少しでも高く背を伸ばそうとライバルたちがひしめき合う。一方、まだ光が当たっていない部門の仕事は試行錯誤でどんなふうにも変えやすく、背を伸ばせば光を一手に浴びることもできる。

「マイナーであるということは、めちゃくちゃチャンスです。法人営業は、やっていることも中にいる人も、非常に可能性を感じる部門でした」

思い立ったら小さくやってみる

HISには、海外のネットワークがある。加えて、法人部門にはBtoBのネットワークがある。これらをつなぎ合わせて、何か新しいことができないかと山野邉さんは考えた。

「インターネットが発達して、どんどん業務渡航が便利になっていくわけですから、かねて旅行会社は事業自体を変えていかないと明日はないという危機感を持っていました」

いろいろと事業のアイデアはあったが、2019年の春頃、HISの店舗改装の依頼をしていた建築デザイナーとの打ち合わせで、山野邉さんは思いもかけない提案をする。

打ち合わせでは店舗のデザインを見なければいけないのに、他のことが気になった。その建築デザイナーが店舗デザインとは別にパンケーキ屋を運営していたことだ。話を聞いてみると、とてもこだわりのあるお店だということがわかった。

そこで、「過去に一度もやったことがないにもかかわらず、気がついたら、その場の勢いで『海外にお店を出してみませんか』と提案していました」。その結果、即断即決。両者ですぐに「やろう」ということになった。

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