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五輪開会式「バッハ会長の話し方」は二流の典型だ 「話し方のプロ」が6つの問題点を徹底解説

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  • 岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
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また、「情感」がまったく伝わらないスピーチだったという問題もあります。

【5】抑揚も情感もないデリバリー

橋本会長の挨拶も、決して、最上級といえるものではありませんでしたが、少なくとも、こみ上げる涙を必死で抑えている様子などがうかがえ、情感がこもり、訴えかけるトーンであったように感じました。

これが森喜朗・前組織委員会会長の挨拶だったら、いったいどれぐらいの長さの「マウントトーク」になっていたのだろうかと思うと、寒気がしますが、バッハ会長のスピーチは、その「情感」がまったく伝わりませんでした

力強さを前面に出すタイプなのかもしれませんが、ジェスチャーや声のトーンも一本調子。世界のエリートにも、「退屈な話し方」をする人は少なくないことを知る機会になったといえるかもしれません。

【6】ストーリーがない

葛藤や困難、苦労、相克などのヒューマンストーリーやエピソード、逸話などが盛り込まれていなかったことも印象に残らない大きな理由です。

会長の話からはずれますが、「ストーリー」や「共感」という意味では、開会式自体にも多くの課題がありました。

時間や人的な制約で仕方なかったのかもしれませんが、結局、何が言いたいのか、わからない演出。ぶつ切りで、寄せ集め的な構成で、前後のつながりがなく、「キーメッセージ」も「ストーリー」もなかったのは非常に残念でした。

「日本の発信力の欠如」が明らかになった

ジグゾーパズルの一つ一つのピースは精巧に間違いなく作られているけれど、全体を組み合わせてみると、何の絵も浮かび上がらない。

つまり、「ディテールはいいけれど、最も言いたいメインメッセージがあいまいで、結果的に何も伝わらない」という日本人の典型的なコミュニケーション手法を象徴するイベントだったと言えるかもしれません。

これまでの派手で、豪華絢爛なセレモニーが正解だったとは思いません。刻々と事情も責任者も変わり、予算も限られる中で、現場の方々が信じられないほどの制約と戦ってきたことは容易に想像できます。

ただ、その不眠不休の努力、思いを、バッハ会長や現場の責任者が生身の言葉で伝える場面や機会があってもよかったのではないでしょうか。

血のにじむ汗と涙のストーリーを吐露してもらえれば、われわれも共感し、理解しうるところもあったでしょう。世界中の人々が、コロナと恐怖と言う共通の敵と戦ってきたわけです。その気持ちに寄り添い、人智の力で、共に打ち勝つストーリーを描き出せたかもしれません。

しかし、なぜ、そうしたメッセージ性はかき消され、バッハ氏の美辞麗句のスピーチに象徴される、言葉や見世物の羅列で帰結してしまったのか。オリンピックというイベントの特殊性もあるのでしょうが、いずれにしても、「日本の発信力の欠如」という大問題があらためて浮き彫りになったと言わざるをえません。

この課題は、「とりあえず、良かった」「あとは競技を楽しもう」と忘れ去るのではなく、今後、慎重に分析・検証していくべきものではないでしょうか。

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