――東宝の方々にとって『ゴジラ』はどのような存在なのでしょうか?
これはうちの社長の島谷(能成)が言ったことなのですが、ディズニーにとってのミッキーマウスのような存在が、東宝にとってはゴジラなのだと。われわれの会社のシンボルだという気がしています。
いい作品だから世界公開より2カ月遅らせた
――東宝さんが洋画を配給・宣伝するのは珍しいことだと思いますが、戦略の違いなどはあるのでしょうか?
国内の作品との違いは、いろいろな会社が出資する製作委員会方式ではない、ということが大きな違いでしょう。製作委員会方式では、テレビ局、出版社、新聞社、広告代理店それぞれが自社メディアを使って宣伝してくれるということがメリットなのですが、洋画の場合だとそれがない。その分、宣伝費をかけて宣伝を行うことになり、われわれも今回はいつもよりも宣伝費をかけています。
また、洋画と邦画との違いとして、俳優さんや監督の稼働ということもポイントです。邦画の場合は、テレビのバラエティ番組や情報番組などに俳優さんをブッキングして、作品を露出させることができます。邦画の場合は、そういったきめ細やかな宣伝を行うことができますが、洋画では難しい。今回は幸いなことに『GODZILLA ゴジラ』には渡辺謙さんが出演していますので、彼に紙、テレビ、ウェブなどの取材を入念に受けていただきました。さらに、日本語吹き替え版キャストの波瑠さん、佐野史郎さんにも稼働をお願いしました。ですから今回は、ハリウッド映画の宣伝と、これまで東宝がやってきた宣伝をミックスしたような展開になりました。
――アメリカでは5月に公開され、それからおよそ2カ月。日本が世界で最後の公開国となるわけですが、そのあたりの戦略についてお聞かせください。
出来が悪ければ、この2カ月で悪いうわさが広がって、お客さまが減る可能性もあったわけです。しかし、脚本を読み、撮影現場に行ってみて、それから完成した映像を見たりするうちに、これは出来がいいだろう、と確信を持つようになりました。ですから、あえて2カ月遅らせて、夏映画として公開することにしました。おかげさまで、全世界興収が日本円にして500億円と世界中で大ヒットを記録しております。しかも出来がいいので、今度のゴジラはすごいらしいぞ、といううわさが広がっていると思います。
――ある意味、世界中の口コミが日本に広まっている状態ということですね。
そういう意味では2カ月遅らせてよかったと思っています。出来が悪かったら、日米同時公開にしたかもしれません。
――しかし、今年の東宝の夏映画といえば、思い出のマーニー、ポケモン、STAND BY ME ドラえもん、エイトレンジャー2、そしてゴジラと強力な作品が多数あります。そのあたりの調整はどうだったのでしょうか?
本音を言えば、何かを別の年に公開したいところなのですが。ただ、今年はおかげさまでいい夏になりそうです。いずれも夏でなければお客さまを集めにくい作品なので、それは仕方のないことだと思っています。それぞれターゲットが違う作品なので、うまくすみ分けられるのではないかと思っています。
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