軍事的緊張感とは裏腹 回復続く韓国経済の底力

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「断固たる措置をとる」(韓国)、「自作自演の捏造」(北朝鮮)。3月26日に黄海上で発生した韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没事件。その原因を「北朝鮮による魚雷攻撃」と韓国政府が断定した5月20日以来、朝鮮半島の軍事的緊張が高まっている。

南北朝鮮間の対立が深まるたびに、経済への影響が懸念される韓国。だが歴史を振り返ると、その影響はそれほど大きくはない。

天安が沈没した海域では1999年、2002年、09年と衝突が勃発。特に02年に北朝鮮艦艇が韓国領海に侵入、銃撃戦となった「第2次延坪海戦」では南北双方で計19人の戦死者が出た。しかし、海戦発生直後の韓国総合株価指数(KOSPI)はそれまでの上昇傾向を維持し続け、746ポイントから800ポイントを突破している。

今回も韓国政府の調査結果発表直後には前日比で約30ポイントという13カ月ぶりの大きな下落幅を記録したが、すぐに元の水準に戻した。今年のGDP成長率の見通しは4%台と、世界景気の回復を受けて輸出を中心に堅調な韓国経済の実態を反映した動きだ。

過去にも軍事衝突の際には「外国からの投資が忌避する地政学的リスク」が指摘されてきた。だが、これまでの韓国経済の軌跡を見ると、それが杞憂だったことは明白。要因の一つは在韓米軍の存在による安全保障の向上。加えて、中国やロシアなど歴史的に親北朝鮮の国家とも関係が改善していることが大きい。今や「欧州経済の不安定さが、現在の韓国経済により大きなリスク」(韓国大統領府関係者)とさえされる。

緊張が高まる中、2日に行われた韓国の地方選挙。主要都市の市長・知事選では親北朝鮮的な野党・民主党が勝利した。任期半ばを迎える李明博大統領の信任投票でもあったが、「北朝鮮に強硬な大統領への批判というよりは、国会で優勢な与党を牽制する有権者のバランス感覚が反映された」(慶応義塾大学の西野純也専任講師)。

ただ、過去と違う点が一つある。北朝鮮の「後継者問題」がそれだ。後継者体制の確立のために、軍事的功績がさらに必要と北朝鮮が判断すれば、新たな天安事件が発生する可能性もある。全面衝突までには至らないが、南北間が部分的に銃火を交える余地は残っている。

(週刊東洋経済2010年6月12日号)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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