実は、日本の少年野球は国際大会でもこういう試合をしてきた。野球が普及していない途上国の代表を相手に、立ち上がりから出塁しては盗塁、得点を繰り返す。国際大会では「球数制限」がある。攻撃が延々と続けば、相手チームは投手を交代せざるをえなくなる。早々にコールド勝ちをするのだが、しばしば日本の監督は相手チームの監督から抗議される。
「確かにお前たちは強い、でも、俺たちはお前たちのような野球は絶対にしない。お前たちのような相手との試合が続けば、うちは投げる投手がいなくなってしまう。お前たちは俺たちより強いのはわかりきったことだ。でも、うちの子どもたちだって投げて打って、野球をする権利はあるんだ」
日本の少年野球はトーナメントが主流だ。何が何でも勝たないと次がない。だから監督は初回からでもどんどん点を取っていく。点差が開いても手を緩めることはない。
MLBでは「マナー違反」の行為
大量得点したチームが盗塁やバントをすることは、MLBなど世界の野球では「マナー違反」「好ましくない」とされるが、日本では「大差でリードしていても攻撃の手を緩めないのは立派だ」と評する人さえいる。
「小さなころから、勝つことへの執着を覚えさせることは大事だ」という大人もいる。しかしルール違反ではないにせよ、「正々堂々」とはほど遠い、相手の弱みを突くような手を使って勝つことを覚えさせることに、どんな意義があるのだろうか。
スポーツマンシップの考え方では、相手チームの選手は「敵」ではなく、ともにスポーツをする「仲間」であって、勝敗以前に「互いに力を出しあってプレーできる」ようにすることが重要だ。実力差がある場合でも、姑息な手を使って相手をけちらすのではなく、互いに尊敬の念をもって「試合を楽しむ」姿勢が大切だ。
日本の小学生の野球人口は激減している。スポーツ少年団に属する学童野球(軟式)の競技人口は、2009年には18万0058人(男子17万3978人、女子6080人)だったが、2019年には11万7176人(男子10万9435人、女子7741人)と35%も減少している。またリトルリーグやボーイズリーグなど硬式野球の競技人口も減少している。地区によっては試合や大会ができないほどに衰退しているところもある。
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