グーグル銀行がコンビニ銀行を脅かしかねない訳 新たな金融サービス「Plex」とは一体何者なのか

✎ 1〜 ✎ 46 ✎ 47 ✎ 48 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このような形態の金融サービスが現れると、既存の銀行には多大な影響を与えるはずだ。

とくに問題なのは、ATMを使った振り替えだ。

口座振り替えの手数料がかなり高い中で、料金がゼロ、あるいは非常に低い送金・決済が可能になる。しかも、スマートフォンの操作だけでできるので、銀行窓口やATMの所在地まで出向く必要もない。だから、ATMの利用者は激減するだろう。

コンビニ銀行には大きな影響

既存の銀行にとっても大きな影響があるが、とくに問題となるのは、ATMの送金手数料を収入源としてきた銀行だ。セブン銀行やローソン銀行、イオン銀行などがそれにあたる。

セブン銀行は、2001年に設立された。そして、従来の日本の銀行の基本的なビジネスモデルである「預貸金利鞘モデル」とは異なるビジネスモデルを確立した。店舗にあるATMの手数料を基本的な収入源としたのである。

このビジネスモデルは成功し、高い収益率を上げた。そして、低金利により伝統的な銀行のビジネスモデルであった「預貸金利鞘モデル」が、金利の低下で破綻しつつある中で、銀行の新しいビジネスモデルとして成長が期待されてきた。

そして、実際に、これらの銀行は成長した。経常利益を見ると、前述の銀行はすべて黒字である。セブン銀行は地銀トップ5に入る水準であり、ほかも地銀中位行に匹敵するレベルの利益水準を確保している。

ところが、最近になってこのビジネスモデルの環境が大きく変化している。

数年前から、手数料収入の伸びが鈍化しているのだ。

そして今後は、上述のような巨大な競争相手に直面することになる。グーグルPlexのようなサービスが広く使われるようになると、ATMを使う人は極めて少なくなってしまうかもしれない。ATM収入に依存する銀行が生き残るのは至難の業となりかねない。

グーグルPlexの影響はあまりに大きい。

アメリカのバイデン大統領は、7月9日、大企業による寡占の弊害を正すための大統領令に署名した。その中には、「大手IT企業による消費者金融参入の影響の調査」も含まれている。アメリカでは今後、Plexのようなサービスは規制されるのかもしれない。

しかしそれは同時に、消費者が利用料の安い金融サービスを利用できなくなることを意味する。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事