元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」

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出前館元会長の中村利江氏は、日本のフードデリバリー市場は海外プレーヤーにとって「未成熟でおいしい市場」だと語る(撮影:尾形文繁)
コロナ禍で巣ごもりが長期化する中、好況に沸くフードデリバリー業界。市場調査会社のエヌピーディー・ジャパンの調べでは、2020年の外食デリバリーの市場規模は6264億円と、前年比50%増にまで急拡大を遂げた。
成長する日本市場を狙い、2020年以降は多くの海外プレーヤーが参入。「Uber Eats」や「出前館」といった先行プレーヤーとの競争は熾烈化し、各社こぞってクーポンのバラマキを行うなど、終わりなき過当競争を繰り広げているようにも映る。
フードデリバリーの乱戦は今後どんな展開を見せるのか。2020年11月に出前館の会長職を辞し、2021年4月にはM&A仲介大手の「日本M&Aセンター」の専務執行役員に就任した、中村利江氏に聞いた。
【2021年7月21日9時27分追記】初出時の表記に一部誤りがありました。お詫びの上、表記のように修正いたします。

――約20年間携わってきた、出前館の経営の第一線から昨年退きました。

同じ人が長いこと(経営を)やり続けるといろいろなしがらみができてしまうので、5年くらい前から後任を探す必要があると考えていた。

海外の投資家への説明に回っていたときから、(今年6月に上陸した)アメリカのDoorDashなど海外の黒船が必ず日本に進出してくると確信し、資金と組織力を整えてしっかりと戦う準備をする必要があると思っていた。そこで、(2020年3月に)LINEグループに入ることを決めた。こうした準備が整ってきたので、新体制に事業を執行してもらうのがよいと考えた。

フードデリバリー市場はまだ拡大する

フードデリバリーは体力勝負になっている。各社ふんだんに体力があるわけではないので、資金が続く範囲の中でやっていかざるをえない。

Uber Eatsも海外ではうまくいっていないことが多く、インドなどでは撤退するケースも出ている。(KDDIによるmenuへの出資など)国内の通信事業者が宅配事業者へ出資する事例も出ており、日本で今後もM&Aが起こる可能性はある。

――日本のフードデリバリー市場におけるプレーヤーは増え続けています。過当競争に陥っているのではないでしょうか。

「どうしてそこまで過激な奪い合いをしているのか」と思われるだろうが、日本は配達件数自体がまだ少なく、潜在的な市場規模は大きい。市場が広がらないのに戦っていたら愚かだが、アイテムや対応店舗数が増え、デリバリーのハードルが下がれば、市場のパイはさらに拡大するはずだ。

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