1938年創業の紀文食品が今になって上場した理由 堤裕社長「企業価値を高め社員に喜ばれる会社に」

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長田:「社員に喜んでほしい。誇りを持ってほしいので上場しました」と上場の目的を熱く語っていたある創業経営者にインタビューしたことがあります。が、その会社は経営破綻に追い込まれてしまいました。逆に、企業価値向上が最優先とうたい、戦略事業、拠点を次々と売却し大胆な人員削減を実施。その結果、V字回復を果したコストカッターは「強いリーダー」として、市場では高く評価されていました。

本来は、社員も株主も、さらには社会も幸せにできれば言うことはないのですが、言うは易く行う難し。これが上場企業の宿命です。社員を大切にしている紀文食品は、この二律背反になりがちな経営をベストな形にするため、どのような戦略を考えていますか。

かつて海外でギャップがあった「和風」

:企業価値を高める牽引車として、グローバル化を推進しようとしているのです。人口減少により国内市場が縮小する一方で、海外への移動時間が短くなり世界が狭くなってきました。当社の主力は「和風伝統食品」です。かつて海外でギャップを感じられていた「和風」が、今、逆に新鮮さを持って受け入れられるようになってきました。

堤裕(つつみ・ひろし)/紀文食品代表取締役社長。1980年慶應義塾大学経済学部卒、紀文(現紀文食品)入社。2007年取締役。2017年12月から現職(撮影:今井 康一)

「スシ」が世界中で食べられるようになりました。それに伴い、カリフォルニア・ロールと呼ばれる寿司のネタやサラダの具材として使われている蟹足かまぼこ(蟹風味かまぼこ=カニカマ)は、日本市場を大きく上回る勢いで海外市場において急拡大しました。これは、コモディティーでニッチな商品かもしれませんが、グローバル展開することで業績を拡大できると判断しました。

もう1つの戦略商品として海外での販売を強化しようとしている商品がおからパウダーとこんにゃく粉を素材とする「ヘルシーヌードル」(糖質0g麺)です。これは美容や健康の維持に積極的な人、カロリー制限をしている人が多いアメリカや中国で受け入れられることでしょう。海外市場で活躍する機会、場が増えることで、社員も大きく成長し、充実した人生を送れるようになるのではないかと考えております。

長田:海外事業を強化するうえで念頭に置いておかなくてはならないのが、水産加工食品文化に慣れ親しんでいる中国、韓国などの企業が「模倣の戦略」により短期間でキャッチアップしないか、場合によっては、家電製品で見られたように(クリステンセン・元ハーバード大学教授が言うところの)「破壊的イノベーション」を仕掛け、市場を奪われないかという懸念です。この危機管理についてどのように考えていますか。

:競争力の要は、魚、大豆、 卵(鶏卵)、 鶏肉など「4つのタンパク質を結合」し、それぞれのよさを活用している点にあります。例えば、伊達巻は魚と卵。豆乳は大豆。ヘルシーヌードルで使っているおからパウダーも大豆から採れます。

確かに、これらの商品は、先端技術製品のように複雑な仕掛けがあるわけではありませんから模倣しやすいかもしれません。家庭で作るものを工場で作っているだけと言われても仕方がありません。特許で完全武装しているわけでもありません。われわれとしては、料理(生産)方法を工夫するだけでなく、ヘルシーヌードルのような差別化した商品をスピーディーに開発、発売し続けていくことが大切だと考えています。

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