1938年創業の紀文食品が今になって上場した理由 堤裕社長「企業価値を高め社員に喜ばれる会社に」

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紀文食品の堤裕社長に上場の真意を聞いた(撮影:今井 康一)
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企業が上場する目的とはいったい何なのか。東芝と物言う株主(アクティビスト)との間で生じている軋轢を見るにつけ、成長するためには必須のプロセスとして信じて疑わなかった「企業の一大事」である上場の意義があらためて問われるようになってきた。コーポレート・ガバナンス(企業統治)は重要だが、それは経営をよりよき方向に導くためのツールであり最大目的ではない。仏作って魂入れず、になってしまってはいけない。
コーポレート・ガバナンスの議論で頻繁に使われる言葉は「株主重視」である。上場企業であれば、株主重視は当然のことだが、かつて、日本企業の経営者がつねに口にしていたセリフがあまり聞かれなくなった。「社員のために」である。  
ところが、「上場することで、社員に幸せになってほしい」という思いから東証1部に上場した老舗企業がある。水産練り物製品のトップメーカー・紀文食品だ。子会社の紀文フードケミファが東証2部に上場していたことがあったが、1938年創業の紀文食品は長らく非上場を貫いてきた。
紀文食品は企業価値が高まれば株主だけでなく社員の人生が明るくなる。そして、社員が幸せになれば企業価値も高まるというサイクルを目指している。
なぜ今、あえて上場なのか。その背景には、過去の失敗から得た教訓があった。同社は上場を機に「4つのタンパク質」で世界に打って出る。堤裕社長に「紀文らしい上場」について聞く。

もっとイキイキした企業文化を創りたい

長田 貴仁(以下、長田):今回、4月13日に東証1部に上場した最大の目的を「グローバル化」と強調しています。確かに、グループ連結売上高約1000億円のうち、国内食品事業が73.3%であるのに対し、海外食品事業は9.4%にとどまっています(顧客と共同配送を行う食品関連事業は17.3%)。なぜ今、上場しグローバル化を宣言したのですか。

堤 裕(以下、堤):創業80周年を迎えた2017年、100周年に向けて、もっと会社を大きくしたい、もっとイキイキとした企業文化を創りたいという思いから東証に上場しようと決断し、着々と準備を進めてきた結果、やっと実現したというのが実情です。当社は、従業員という呼称を使いません。嘱託、アルバイトまで含めて皆、「社員」と呼んでいます。

お客様と同様、「切磋琢磨し幸せになる」ことを経営理念に掲げ、社員の幸福を最大目的にしてきた会社だからです。上場することで、社会貢献すると同時に、仕事を通じて、社員に幸せになってほしい、活力のある人生を送ってほしいと思ったのです。そのためにも、業績を向上させなくてはならないと考えました。

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