CIAが同時多発テロの予兆を見逃した「ある理由」 事件から20年、様々な原因分析がなされたが…

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その後、北京訪問は実際成功に終わったが、面白いのは被験者が自分の予想をどう「記憶していたか」だ。たとえば訪問前に「失敗に終わる」と予想していた人が、「私は成功を楽観視していた」などと主張したのである。彼らは実際の結果にさして驚きもせず、自身の予想を過大評価した。フィッシュホフはこれを「後知恵バイアス」と名づけた。物事が起きたあと(つまり答えを知ったあと)で、「そうなると思っていた」「当然予測可能だった」と考える心理的傾向だ。

9.11に置き換えると?

9.11に置き換えた場合、事件が実際に起こったあとに思い返してみれば、テロ計画が着実に進行していたことは火を見るより明らかだ。しかし当時はどうだっただろう? ここでも「後知恵バイアス」が働いていないだろうか? ほかのさまざまな脅威に紛れて察知するのが困難なテロ攻撃について、CIAは不当に非難されているのだろうか?

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アメリカのような国はつねに無数の危険にさらされている。テロ組織は世界中に散在する。監視システムは危険な可能性のある通信データをひっきりなしに傍受しているが、そのほとんどは単なる戯言か舌先三寸の脅しだ。情報機関がその「すべて」を調査すれば人員も資金も逼迫する。問題を過剰に判断することにもなって、状況の改善にはつながらない。問題は本物を見極めるのが困難なことだ。あるテロ対策責任者が言ったとおり、赤旗の山の中から赤旗を探し出すようなものだ。

CIAやその擁護者は、9.11は情報機関の失態ではなく、複雑に絡んだ要因が招いた結果だと訴える。こうした論議は当時からずっと熱を帯びている。一方は「情報機関が明らかな兆候を見逃した」と非難し、もう一方は「CIAは考えられる限りの行動をとった。テロ計画を未然に察知するのは至難の業だった」と主張する。

しかし、両サイドとも間違っている可能性があると考えた人はほとんどいない。

(次回は約1週間後配信予定です)

マシュー・サイド コラムニスト、ライター

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ましゅー・さいど / Matthew Syed

1970年生まれ。イギリス『タイムズ』紙の第1級コラムニスト、ライター。オックスフォード大学哲学政治経済学部(PPE)を首席で卒業後、卓球選手として活躍し10年近くイングランド1位の座を守った。英国放送協会(BBC)「ニュースナイト」のほか、CNNインターナショナルやBBCワールドサービスでリポーターやコメンテーターなども務める。

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