CIAが同時多発テロの予兆を見逃した「ある理由」 事件から20年、様々な原因分析がなされたが…
テロ1カ月前、犯人はアメリカの「航空訓練学校」に入学
2001年8月9日、33歳のモロッコ系フランス人、ザカリアス・ムサウイは、ミネソタ州イーガンのパンナム・インターナショナル・フライト・アカデミーに入学した。この航空訓練学校には高性能のフライトシミュレーターが完備されており、民間ジェット機の操縦を総合的に学べる。ムサウイは、少なくとも表面的には、ほかの生徒となんら変わりなかった。人当たりがよく、好奇心旺盛で、一見して裕福な印象だった。しかし気になる点もあった。
まず、ムサウイは8300ドル(約87万円)という学費の大半を現金で、しかもすべて100ドル札で支払っていた。そして訓練が始まると、彼はコックピットのドアに異常な関心を示し、ニューヨーク市内やその近辺の飛行パターンについて繰り返し質問をした。
不審に思ったスタッフは、ムサウイが入学して2日後、ミネソタ州のFBIに通報。ムサウイは逮捕された。FBIは尋問を行うと同時に、ムサウイのアパートの捜索令状を申請。しかし捜索が必要な根拠を十分に示すことはできずじまいだった。つまりこの時点でアメリカは、ムサウイという不審な人物と、その背景にうごめくさらに大きな脅威─イスラム過激派組織─とを結び付けることができなかった。
ムサウイには入国管理法違反の疑いもかけられていたが、そんな人物が、史上最悪のテロリスト事件のほんの数週間前に、アメリカの航空訓練学校で飛行技術を学んでいたのである。
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