アイドルの「潰しがきかない」って本当の話ですか 大木亜希子×遠藤舞「好きなことはいつかつながる」
大木:でも今では、会社員を経験して本当によかったと思っています。なぜなら会社員として経理を学んだことで、予算を第一に考えられるようになったから。
例えば今、作家業でnoteで小説を発表する際、女優さんやカメラマン・メイク等のスタッフを編集者さんに相談しながら自分でも提案したり、アサインしたりするんですけど、出版社さんが私にかけられるであろう予算内で見積もって出すんです。めちゃくちゃリアルに、メールが見せられないぐらい具体的に提示するんですけど、それは世の中はお金がすべてでお金で動いていると考えているから。会社員やる前のタレント時代は、自分の目標や夢ばかりが先行して、お金ありきで考えることがなかったんですけど、夢物語じゃダメだと思うようになりました。
遠藤:確かにフリーランスで生きていくにはお金は大事ですもんね。
大木:とくに私が勤めていたのはベンチャー企業だったので、一時は早朝に出社して終電で帰るくらい働いて。当時は大変でしたけど、あの頃に裏方業を丸ごと経験させてもらったおかげで、お金への認識が変わりました。
遠藤さんはボイストレーナーになるまでに、かなり下準備はされたんですか。
遠藤:そうですね。お仕事を始めましたって公表してから、たぶん7~8カ月ぐらいでバイトを辞めなきゃいけなくなるぐらいには忙しくなったんですけど、それまで結構準備を重ねていました。私もすごく心配性の性分なので。
でも、準備って言ってもなかなか難しくて。ボイストレーナーって資格のある仕事ではないから、権威性を表せるものがないんですよ。
大木:たしかにそうですね。
下積みが実を結んだというよりも
遠藤:なので、知識を蓄積して、実績を積んでいくことでしか信頼は得られないと考えたんですけど、一方ではどんな知識を身に付ければいいのかがまったくわからなくて悩んだ時期もありました。ボイストレーナーの仕事を始めてからもそれは続いて……なので、すごいジレンマがあったんです。
大木:習いに行くとかはされなかったんですか。
遠藤:ボイストレーナーとして、有名なボイストレーナーの方に習おうとコンタクトを取ったこともありました。でも、「同業はダメ」って断られたんですよ。上のほうの方の中には「同じパイを取り合うライバルだし」「ノウハウの流出を防ぐ必要がある」みたいな感じで思ってらっしゃる方もいるようで。
で、そこでちょっと心が折れかけたんですけど、その頃、同じくアイドル専門に教えている詩菜先生っていう方がいらっしゃって、お話させてもらう機会があったんです。そうしたら、「ここに習いに行くといいよ」「知識がたまるよ」みたいなことを全部教えてくださって、すごいびっくりしたんですよ。
大木:すてきな方ですね。
遠藤:なので私はすごく運がよかったと思います。下積み生活が実を結んだというよりも、いい人との出会いがあったから、キャリアもここまで形成できたかなって。