アイドルの「潰しがきかない」って本当の話ですか 大木亜希子×遠藤舞「好きなことはいつかつながる」

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大木:私たちのように芸能界にいた人間が一般企業に社員として入社すると、ビジネスメールの書き方や名刺の渡し方がわからなかったとか、結構困ることが多いですよね。

遠藤:そうですね。社会人1~2年目で習うようなことをまったく教わってこなかったので、みんなが当たり前のようにやっていることがわかりませんでした。

大木亜希子(おおき・あきこ)/フリーライター、女優・タレント。2005年、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』で女優デビュー。数々のドラマ・映画に出演後、2010年、秋元康氏プロデュースSDN48として活動開始。その後、タレント活動と並行しライター業を開始。Webの取材記事をメインに活動し、2015年、NEWSY(しらべぇ編集部)に入社。2018年、フリーライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)(撮影:尾形文繁)

大木:コンプレックスは感じていましたか。

遠藤:感じていました。これは会社員になる前、ミシュランにも掲載されるような高級レストランでレセプションのアルバイトしていたときの話ですけど、女性社会だったんですよ。ちょっと言葉が悪いですけど、歳上のお局的ポジションの女性がいらっしゃって、ことあるごとに「やっぱり元アイドルだもんね」って意地悪を言われていました。それで元アイドルであることのコンプレックスが色濃くなってしまったところもあります。

大木:めっちゃわかります。私が勤務していた会社は、幸い上司も同僚もいい人ぞろいだったんですけど、取引先や関係者全員がみんなそうだったわけじゃなくて。ある日、ひとりの男性に「元アイドルって請求書も書けないんだね。可哀想に」と言われたことがあるんです。もともと男尊女卑120%の方だったので、遊び半分の発言だったのかもしれません。とはいえ、「元アイドルはこんなこともできないのか」という考え方自体、色眼鏡以外のなんでもないじゃないですか。

「正しい30代になる準備ができていない」

遠藤:とにかく見下したいタイプって感じですね。

大木:本当にそうなんですよ。あとは、これは当時仕事で関わりのあった別の年上女性からなんですけど「あなたは正しい30代になる準備ができていない」と言われたこともあります。私には双子の姉(奈津子)がいるんですけど、「双子のお姉ちゃんは文化人枠でうまくやってるけど、あなたはこれからどうなるのかしらね」って。そういうことの繰り返しだったからこそ今、作家やライターとして活動させていただけているとは思うんですけど。

遠藤:でも、めちゃくちゃ余計なお世話ですよね。私は会社で、突然「議事録を作って」と言われたことがあります。「たぶん試されたんだろうな」と思ったんですよ。社会人経験がないのも向こうはわかっているし。議事録という言葉も正直聞いたことがなかったので、ネットで調べて雛形をダウンロードして書き方を調べて作りましたけど、そういう「どうせできないでしょ?」っていう無茶ぶりみたいなのはありましたね。

大木:しかも、請求書とかエクセルでの図表作成だとか、少し難易度が高めのものが多いんですよね。いちいち試されてる気がしませんか?

遠藤:そうですね。できて当たり前だと思われてるのかもしれないですけど、ちょっと微妙なラインですよね。

大木:何でしょうね、あれは。

遠藤:「人の不幸は蜜の味」じゃないですけど、結局みんな、転落人生ってストーリーとして好きですよね。だからこそ「元アイドルの、落ちぶれた女の子」という目で見てくると言うか。

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