「29歳元アイドル」会社員になって痛感した無力 「忙しいふりをするスキルだけが身についた」
30年近く生きていると「驚く」という体験をすることがそれなりに多くある。
一口に驚くといっても大まかにはふたパターンあり、衝撃的に、強く短く感じる驚きと、じわじわと効いてきて、気づいた時にハッとするパターンの驚きがある。
私が18歳からずっと同じ芸能界という広いようで狭い世界にいて、長年お世話になった事務所を辞めてから、ふと(ボイストレーナーになりたいという願望こそあったが)これからどうしようと考えた時、未来へ繋がる自分の可能性の枝葉の少なさに驚いた。これはふたパターンのうち、後者のじわじわ驚いたパターンだ。
絶望を少々孕んだ驚きを、思考を整理しながら噛み締めていくのは、とても苦い気持ちになった。
だって、十数年間必死に磨いてきたスキル【ダンス・歌・ルックス・バラエティ能力】はいってみればかなりニッチである。番組や握手会で鍛えた瞬発力は何かに役立ちそうだが、あとは度胸とかやりきる力とか、精神論的なものしか身についていない。本当に潰しの効かないことをやってきたんだなぁと、しばし打ちひしがれた。
「中途半端な売れ具合」ほどきつい
当たり前だけれど、芸能事務所は一昔前の大企業じゃあるまいし、生涯雇用してくれるところなんてない。売れようが売れまいが、自分のライフプランをあらかた考えて、逆算しながらしたたかに生きていけない人は芸能界に入るべきではないのかとまで考えた。
さらにこの売れ具合っていうのもミソで、全くもって芽が出なければ早々に諦めて別の道に方向転換することもできる。逆に誰もが知ってる顔になれるまで売れれば、芸能界の第一線から退いたとしてもその知名度や人脈を使って二次的なビジネスもやりやすいであろう(頭は使わなくてはならないが)。
しかしこれが中途半端な売れ具合だと、辞めどきもわからずズルズル、けれども辞めた後にもうまく経歴を活かせるほどの知名度もない。私はどちらかといえばこの「中途半端な売れ具合」に片足突っ込んだくらいの人種だったのではないかと思う。
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