「プロデューサー兼演出家」が40年続けた文化事業

「希望を捨てない悲観論者」の目配りと感覚

1987年、アメリカの歴史家、ダニエル・ブーアスティン氏(左)と語る山崎正和氏(右)(写真:サントリー文化財団)
2020年8月、惜しまれつつ亡くなった「日本を代表する知性」山崎正和氏。このたび逝去直前に行われた同氏へのロングインタビューや、キーパーソンの貴重な歴史的証言を基にした初の本格評伝『山崎正和の遺言』が刊行された。
生前、山崎氏と交流があり、オーラルヒストリーにもかかわった苅部直氏が、山崎氏の「人物像」を解き明かす。

初めて明らかになった事実も少なくない評伝

劇作家、評論家として幅広く活躍した山崎正和が亡くなってから、まもなく1年になる。そのあいだ、山崎が編集に関わった雑誌の追悼特集である『別冊アステイオン それぞれの山崎正和』(CCCメディアハウス)、最後の時期に発表した文章をまとめた『哲学漫想』(中央公論新社)が刊行されている。これに続いて初めての評伝としてまとめられたのが本書である。

『山崎正和の遺言』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

著者、片山修は、山崎のその後の評論活動の方向を予告したと言える著書、『おんりい・いえすたでい′60s』(1977年)の初出の連載にあたり聞き書きを担当して以来、45年近く交流をもってきた。思えば、70年代に山崎の伴走者であった開高健、粕谷一希、高坂正堯といった人々は、みな山崎よりも年長か同年代であり、すでに世を去っている。そのころからの山崎の活躍を、長いあいだ親しく目にしてきた書き手として、片山は唯一の存在だろう。

山崎の生涯をふりかえる本としては、評者も関わった当人へのインタビューをまとめた、御厨貴ほか編『舞台をまわす、舞台がまわる――山崎正和オーラルヒストリー』(中央公論新社)がすでにある。こちらの内容は、生涯の全般について述べる通常の自伝に近い。これに対して本書『山崎正和の遺言』は、独自の方針によってまとめられており、しかもそれは、山崎自身の「遺言」とも言えるメッセージに基づいている。

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