LNG船は、受注を待ち、それを受けて造るのが一般的だ。しかし、さやえんどうは三菱重工が自発的に企画し売り込んだLNG船であり、その結果の8隻なのだから、担当者はこの数字を誇っていいと思う。1隻にかかる工期は約3年。最初の1隻は年内には船主に引き渡される予定だ。
ドックの外にも、香焼工場を取り囲むようにさやえんどうが並んでいる。そして敷地内には多くの大きな部品。そこには、建造途中の豆が含まれる。豆といっても、直径40メートル、厚さ40ミリ。40ミリと聞くと厚いが、目にした印象では薄い。直径40メートルに対して1000分の1しかないからだ。
「はなびら」を組み合わせてタンクに
このさやえんどうの豆は、工場内では“はなびら”と呼ばれるパーツを、まずは地上で北半球、南半球、それに赤道あたりの胴体の3つに溶接加工し、ドックへ運んで組み、球とする。
さやえんどうの船長は288メートル、船幅は48.94メートル、深さは26メートル。これまで大きなものをたくさん見てきたつもりだが、動くものでここまで大きいものを見るのは、初めてかも知れない。
では、三菱重工長崎造船所香焼工場が造った最も大きな動くものはというと、石油の貯蔵船だという。長さ390メートルで幅が97メートル、深さは27.6メートル。日本で一番高いビル「あべのハルカス」でさえ高さは300メートルなのだから、その巨大さがお分かりになるであろう。これが5隻、五島列島の上五島国家石油備蓄基地に係留され、稼働している。5年に一度は開放点検工事を行うため、洋上をしずしずと曳航されて香焼工場に里帰りするそうで、そのつど、長崎では話題になるという。ボクもいつか見てみたい。できれば晴れた日に。
ところでこの日は一度は消滅した台風7号が東シナ海で復活し、その影響もあってか、大変な雨と風に見舞われた。掲載している写真のうち、雨が見えるものは見学当日に撮影したものであり、それ以外は三菱重工から提供いただいたものだ。
駅前で買ったレインコートを着てもパンツまでしっかり濡れ、この連載を始めてから、最も悪天候での取材となった。それでもボクの機嫌は最後まで上々だった。すごいモノを見ているという満足感と、かの有名なフレーズをオチに使えるという喜びをかみしめていたからだ。それではみなさんご唱和ください。長崎は今日も雨だった。
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