ドックには、それをまたぐように大きな門状のクレーン、ゴライアスクレーンがそびえ立っている。最大のものは1200トンを持ち上げる能力を持っている。地元の雄・福山雅治氏の体重を70キロと仮定すると、1万7000人分だ。
それをここまで近くで見るのは初めてだ。門の字でいう右足と左足の間は185メートル離れている。高さはおよそ100メートル。見上げるとくっきりと白地に赤の三菱マーク。その白地の部分の大きさは、テニスコート1面分あるそうだ。
ゴライアスクレーンは、遠方からも目立つので「あ、あれはきっと造船所に違いない」という判断の基準になる。見る度に感じていた「あのクレーンの足元はどうなっているのか」という疑問が、今日、解消した。基礎のコンクリートと一体化しているわけではなく、基礎の上に置かれている。基礎工事も大変だったに違いない。
旧約聖書に登場する巨人の名前がついたこのクレーンの下には、長さ約1キロ、幅約100メートルのドックがあり、そこで建造されているのが、今回の目当てのさやえんどうだ。2隻ある。1隻はほぼ完成しているように見えて、もう一隻ではさやえんどうのさやの部分などが造られている。さやのなかには、豆にあたるタンクが収められる。
燃費との戦い
ところで、なぜむき出しだった豆をさやの中に入れようと思ったのか。そこには、燃費との戦いがあった。
LNGの日本への輸入が本格化した1960年代、LNG船の貨物容積は7万立方メートル級だった。それが徐々に大型化し、現在では3倍近くの20立方メートルを超えるクラスもある。たくさん積めれば輸送効率は上がるが、受け入れ基地などの都合もあり、大きくさえすればいいというわけではない。
また、多くを運ぶには多くの燃料が必要になる。燃費を抑えるには、タンクは大きくしても、船全体は軽くし、また、空気抵抗の少ない設計にする必要がある。
そこで、さやえんどうが登場したのである。従来のLNG船には主に2タイプがあった。そのうちのひとつが、おなじみの豆だけがポコポコ並んだモス型と呼ばれるタイプ。歴史があり、メンテナンスしやすく信頼性も高いというメリットがあるが、タンクのカバーが重い割に船体強度に貢献せず、空気抵抗も大きいというデメリットがある。
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