もうひとつは、さやに直接LNGを詰めるタイプ。メンブレン型といい、モス型のデメリットは解消できるものの、LNG船の強度設計を担当する佐藤宏一さんの言葉を借りるとエンジニアリング的に「すっきりしない」ところがあるという。小分けにせず、大きな器に大量の液体を入れることになるので、船が揺れ、LNGが揺れると内壁は大きな衝撃を受け、損傷しやすくなる。
そこで、いいとこどりのさやえんどうなのだ。タンクそのものは球形で、重いタンクカバーは一体化してさやとし、船体の強度アップにつなげる。さやの中には、厚いカバーがなくなった豆が4個並んでいる。
結果として従来のモス型より5~10%ほど軽くなり、空気抵抗は小さくなる。船体の大きさはタンク容量が14万7000立方メートル級の従来型とほぼ同じに保たれたまま、容量は15万5000立方メートルに増えている。
タービンエンジンの燃費も改善
さらに、タービンには従来のものより燃費改善が進んだものを採用したことで、輸送の際に発生する二酸化炭素の量は、従来に比べて25%も減っている(単位荷物あたり)。
建造課程でも危険な溶接作業がなくなり、作業もしやすくなったという。実にいいことづくめだ。
ただ、これまでと設計ががらりと変わるので、建造前には慎重に配置設計や構造解析が重ねられた。かつて、船の設計には現図と呼ばれる実物大の設計図が欠かせなかったというが、今はコンピュータが欠かせない。三菱重工は今回、さやえんどうの設計にあたり、船体構造の解析システムまで開発した。
そこで示されたメリットが評価されてのことだろう、ただいま三菱重工長崎造船所香焼工場では、8隻のさやえんどうを建造中である。
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