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ムカデが這う「ゴミ屋敷」で育った20代女性の苦悩 学校の友だちが一人もいない塾が救いだった

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  • 大塚 玲子 ノンフィクションライター
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大学受験をするときは、受験料や交通宿泊費のことで母からだいぶ叱られたものの、なんとか進学を果たし、「ゴミ屋敷」とはついに決別することに。以来、滅多に実家には帰っていませんが、関係が悪いわけではないので「いまも母や妹とは、しょっちゅう連絡をとっている」ということです。

子どもが親の尻拭いをいつまで続けるのか問題

3年前に結婚し、いまは気の合う友人や職場にも恵まれているという彩矢さんですが、「もしちょっと歯車がずれていたら、私も今の状況にはなれなかった」と話します。

「街にいるちょっとやんちゃしている感じの子とか、ニュースで見かける貧困家庭だったり、そういうのを見かけると、『私もそうだったかもしれない』ってすごく思います。あの塾に通えたから、それに周りの友達が『おまえ汚ねえな』とか『いつも同じ服だな』とか言わない環境だったから、私はなんとか運よく生きてこられただけで、そういう子たちを、あまりひとごとに思えないんです。

だからこそ『その世界だけじゃないんだよ』というのを忘れないでほしいと思って。自分でなんとかできる、なんてきれいごとは簡単に言えることじゃないですけれど、『何かきっかけがあれば、変われるのにな』っていうのは、すごく思っちゃうんですよね。もったいないなって思っちゃいます」

いまの最大の悩みは、両親への資金援助をどこまで続けるべきかということです。彩矢さんの両親は、今も昔もお金がないのになぜかあまり節約はせず、つねに自転車操業で生活しているため、彩矢さんは就職してから毎年100万円近くを渡し続けてきました。でもこれからは、彩矢さんも自分の子育てや家の購入にお金をかけたいと考えています。

「友人や夫に『仕送りをいっぱいしちゃったから、残高がほとんどない』と話すと、『そんなのやめたほうがいいよ』とか『親は親だし、自分の人生を生きたほうがいいよ』と言われるんですけれど。じゃあ本当に私や妹が完全に支援をやめたら、あの人たちどうするんだよ、みたいな感じですね。両親は自己破産しているんですけれど、でも他の人から借りたお金とかもいっぱい返さなきゃいけないはずで。

私自身も、若干の後ろめたさはあります。両親がいろんなところに借金して、誰かの生活費を削って私は育っていたんだ、みたいな罪悪感は心のどこかにずっとあるので。だから人生が100%幸せっていうのは、私は一生言えないんじゃないかなと思います」

おそらくきっと、羨望や恨めしさを感じる人はいるでしょう。経済的な理由で進学をあきらめる人も多いのに、周囲に借りたお金で大学に通うなんて。怒りの矛先を、つい彩矢さんに向けたくなる人もいるであろうことは、彼女自身も「わかっている」といいます。

それでもやはり、彩矢さんが何も悪くないのは確かです。その親のもとにたまたま生まれただけの子どもが、どこまで親の尻拭いをし続けなければならないのか? 彩矢さんには、やはりもう、両親にお金を渡さないでもらえたらと、筆者も思うのでした。

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