コロナで経済は変わったか?FRBの答えは「ノー」 パウエル氏がアクセルもブレーキも踏まない訳

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そして2018年、議長となったパウエル氏は、インフレ圧力が存在しなかったにもかかわらず、4回にわたって利上げした。しかし、中でも4回目の利上げはわずか数日で判断ミスとの様相が強まり、同氏は即座に方針を翻している。

これらのいずれの局面でも「アメリカは事実上の完全雇用に達した」との主張が聞かれたが、今になってみれば、こうした主張は間違っていたように見える。同様に「悪性インフレが目前にまで迫っている」との予想も外れ続けてきた。

新しい戦争に古い戦術で立ち向かう?

だが、過去の過ちに学ぶパウエル氏のアプローチには落とし穴がある。過去の戦術で現代の戦争に立ち向かう危険だ。変化した経済環境に過去の経験を当てはめることはできない。

なにしろ、当時と今とでは状況がかなり違う。その筆頭に挙げられるのが、財政政策の巨大化だ。何兆ドルという財政資金が経済を駆け巡るようになれば、これまでとは違った種類のインフレリスクが確実に生まれる。積極財政(つまり巨額の財政赤字)の下でインフレを制御するには、理屈からいって金融政策を引き締める必要が出てこよう。

つまり突き詰めれば、FRBが賢明なコースをたどっているか否かは、コロナ禍で経済が根本的に変わったのかどうか、という命題の答え次第となる。

判断ミスを示す証拠が浮上した場合に方向転換をいとわないのは、パウエル氏がこれまでに示してきた資質の1つだ(上述した2013年、2015年、2018年の出来事からも、こうした資質が読みとれる)。

むろん、金融政策の操縦桿を預かる同氏の視線が正しい地平線を捉えているなら、それに越したことはない。が、そうでなかったとしても次善の策はある。判断ミスが明らかになった場合、パウエル氏には速やかな軌道修正を期待したい。

(執筆:Neil Irwin記者)

(C)2021 The New York Times News Services 

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