日本の女性社長が令和でも「1割未満」に留まる訳 女性経営者の支援を行う横田響子氏に聞いた
もう1つの変化が起きたのは2010年頃。地方自治体などで、女性の起業に向けた講座の提供が始まったんです。ただ、その結果として男性経営者向けのサポートと女性向けのサポートが分断してしまった。たとえば、女性が地域の商工会などに起業相談に行っても、鼻で笑われて、しょげて帰ってきてしまった、といったことが山のようにありました。
そこで5年前には、経済産業省が女性の起業家支援ネットワークを構築しようと動き出しました。男女で分断されたネットワークを連携させ、女性特有の多様なバックグラウンドに配慮しつつ起業のフェーズごとに支援のやり方を変えていく方向へシフトさせるのが目的です。さらに、東京都では、女性起業家の資金調達を支援するような、本格的な取り組みが行われるようになりましたね。いろいろなところで、サポート体制が整い始めた、というのが現状です。
あきらめ気味の空気すら感じられる
――諸外国と比べると、日本の女性起業家支援は進んでいるといえるでしょうか。
遅れていますね。先進国のみならず、アフリカなどの経済が発展している国でも、女性が自然に起業しています。日本の場合は、女性起業家のポテンシャルを甘く見ている。
海外の女性活躍支援に関するカンファレンスに参加すると、女性の起業支援が一大トピックとして扱われます。一方、日本で開催される場合は、大企業の女性リーダーを育成する話が中心で、起業家については焦点が当たっていない。マイナーなトピックです。若干、あきらめ気味の空気すら感じられます。
――「あきらめ気味」、ですか。
いくら女性の起業支援が重要だと主張しても、たとえば企業からは「いや、うちにはまだ(女性の)部長だっていないから」と言われてしまう。企業では、コーポレート・ガバナンスコードという「黒船」によって、女性の役員比率といった形を整えるところにまずは奮闘しています。
国としても、現在の女性支援は、企業内でのリーダー育成と貧困対策の両輪に振っていて、「女性起業家はまだ根付いていない」というのが結論のようです。
ただ、社内昇格と起業のどちらがより重要か、というのは本質的ではありません。日本が女性経営者を育てるには、この2つを同時進行で支援していく必要があります。それに加えて、女性が社外取締役として外部の組織の経営に関与する。この3つをうまくリンクさせていくことで、女性経営者の土壌が育まれていきます。
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