女性社外取締役「アリバイ選任」する会社への疑問 登用は歓迎すべき流れだがその意味は一体何か

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勃発する女性社外取締役ブームの裏側を追う(写真:KY/PIXTA)

会社の要として、経営方針の決定や執行・監督を行う役員が、取締役だ。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)経営が重視される中、諸外国では取締役に積極的に女性を就任させる動きが加速しており、北欧やフランスでは取締役の4割ほどが女性だ。

女性登用の超後進国ニッポン

対して日本は、上場企業の約6割に当たる2286社は女性取締役がゼロ(東洋経済「ESGオンライン」調べ、2021年3月時点)。1人以上いる企業でも、一部上場企業で取締役に占める女性比率はわずか7%だ。

『週刊東洋経済』6月7日発売号は、「これが世界のビジネス常識 会社とジェンダー」を特集。労働人口が減少の一途を辿る中、女性を戦力化できない日本企業に未来はない。一般の女性社員の育成のみならず、企業の経営層への女性登用は喫緊の課題だ。

"女性登用の超後進国"といっても過言ではない日本だが、企業の間ではここ1~2年、社外から招く取締役である社外取締役の女性の獲得競争が勃発している。

企業社外取締役の適任者の紹介サービスを展開するボードアドバイザーズの佃秀昭社長は「最近は、企業からの問い合わせの7~8割が『女性の社外取締役候補を探して欲しい』というものだ」と明かす。

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人材探しの時期も早期化している。従来、3月決算の企業であれば、翌年6月の株主総会で就任する社外取締役の候補を、前年の秋頃から探し始めるのが一般的だった。それがここ2年ほどは、6月頃から目星をつけておこうと動き出す企業が目立つ。

背景にあるのが、株式市場の強い要請だ。急先鋒といえるのが、外資系の機関投資家である。世界的なESG投資ブームで、ジェンダー格差の解消と取締役の多様性の確保が求められる中、機関投資家たちが「女性の取締役ゼロ」の企業に対して株主総会で反対票を投じ始めたのである。

アメリカのゴールドマン・サックス・アセットマネジメントもその1つだ。アメリカ株に続き、2020年3月から日本株を対象に、女性が不在であれば、取締役会における指名委員会のメンバーや、経営トップに反対票を投じる、という指針を表明している。すでに、伊藤園やオリンパス、グノシー、UUUMなど、多数の企業に反対票が投じられている。

ゴールドマンサックスの担当者は、「取締役に女性がいない企業に、自動的に反対しているわけではない。時間をかけて投資先の企業と女性登用の方針について話し合い、最後の手段が議決権の行使だ」と語る。

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