日本人を縛る「成長する人=偉い」という思い込み ネオヒューマンが示す「AI教が人類を救う」訳
AIは、前向きに生きる力を呼び起こす。死んでも無限に楽しく生き続けられると期待感をもって生きることができる。VRで、閉ざされた幸せの空間に自分を没入させて生きていくことができる。それが人間の力になると私は思います。
AIは敵でなく、補完物
本書は、普通に読めば、「難病の患者でもテクノロジーによって生きる希望が持てる」というふうに捉える方が多いでしょう。でも僕は、ALSだけでなく、もう少し先の未来にある、誰にでも当てはまる話として捉えました。
AIは仕事を奪う、人間を支配するのではないかと恐れる風潮があります。しかし、AIは人間の敵ではなく、人間の補完物です。人間を支配するような自己意識はありませんし、そのようなAIは開発されていません。
「GPT-3」という最先端の自然言語処理モデルがあります。「村上春樹の文体でSF小説を書け」と指示すれば自動的に作ることができるレベルに達しているものです。通常の言語処理は、用意したデータをインプットして学習させるという手順を踏みますが、「GPT-3」は、その元データが「インターネット全体」なのです。
人間の脳神経のニューロンは、1500億個と言われていますが、「GPT-3」には1000億個のパラメーターがあります。人間の脳に近いレベルまでの性能があるわけです。しかし、それだけ高性能なハードであっても、それはそれ。「GPT-3」が意識を持ったり、人間を支配しようと考えることはありません。
テクノロジーは加速度的に進化しています。それに合わせた価値観を作らなければなりません。アメリカでは、科学ジャーナリズムが進んでいて、物理学の最先端や、遺伝子についての本などを書くジャーナリストもいます。
しかし、日本は科学コミュニケーションが弱く、いまだに20世紀的価値観が幅を利かせています。「テクノロジーは人を幸せにしない」などと言っているから、日本はダメになったんだとも言われています。
世界をどう見るか。その目を養うことが教養です。その点で、テクノロジーが進化すると、人生の見え方、世界のあり方、価値観がどのように変化するのかという教養を提示してくれているのが、本書『ネオ・ヒューマン』ではないかと思います。
教養であり、なおかつ夢がある。非常に21世紀的な、人間哲学の本。今の時代に適合した1冊ですね。
(構成:泉美木蘭)
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