経営者が鍛えるべき「海外M&A」に必須の戦略眼 日本企業の事例に学ぶ新時代を勝ち抜く3要素

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成功へのポイント1:単発の買収から複数買収モデルの掛け合わせへ

成功企業は、海外M&Aで複数の買収モデルを掛け合わせることで成果を挙げている。例えば、ダイキン工業は、海外の空調市場において、製品群拡張型と成熟市場占有型の買収を重ねて空調世界一を実現した。

空調機器は地域の生活様式に根ざした製品で、日本ではダクトレス式が、そしてアメリカではダクト式が主流である。ダイキン工業はグッドマン社買収でダクト式空調機器製品群を手に入れ、業務用大型空調機器もOYL買収で獲得した。製品群を拡張して世界最大の空調市場であるアメリカで占有率を拡大していった。

グローリーは、競合大手であったイギリスのタラリス社買収によって金融向け通貨処理機で世界トップになった。そして、この成熟市場占有型に、ドイツやフランス、ロシアで独立系の販売会社を傘下に収める供給連鎖占有型の買収を掛け合わせて、欧米での加速度的な利益成長を実現した。

成功へのポイント2:規模の経済は顧客側でのネットワーク効果発揮へ

従来の買収では、重複事業を解消する固定費削減など、主に供給側で相乗効果を計画するケースが多かった。しかし、成功企業は需要側、すなわち顧客の間で、規模の経済性を働かせてネットワーク効果を創出し増収を実現している。

たとえば、森精機とドイツDMG社の経営統合では、両社の製品ブランドを「DMG MORI」に統一し、工作機械の機種数を削減して操作性向上を図った。

また、日本、アメリカ、ドイツのパーツセンターから世界各国の顧客への24時間以内パーツ発送率95%を実現して、保守も43カ国に拡げた。工作機械は生産の現場で10年、20年と活躍する製品で、故障は工場の操業を止めてしまうので、保守サービスの利便性向上は顧客にとって何より重要である。

DMG森精機は、相互生産や共同購買など供給側での相乗効果のうえに、両社の顧客の間でネットワーク効果が働くことで、工作機械で世界トップと加速度的な利益成長の両方を実現した。

グーグルが実現した顧客側の相乗効果

顧客側での相乗効果は、市場の多面性を巧みに活用することでさらに大きな利益成長の源泉となる。デジタルプラットフォームを構築したグーグルの買収がその代表例である。グーグルは2001年から2019年の間に、ベンチャー企業を中心に234件の買収を実行している。

ユーチューブ、グーグルマップ、アンドロイドなど、現在、グーグルの中核を占める事業は買収で揃えた。これらのアプリやOSによってユーザーの利便性を高め、多面市場でのネットワーク効果が働くことで、グーグルのデジタル広告収入は飛躍的に伸びることになった。

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