日本企業による海外企業の買収は今世紀に入った20年間で9390件、総額は120兆円にのぼる。日本企業は海外M&Aに膨大な経営資源を投じてきた。
著書『海外企業買収 失敗の本質』と『海外M&A 新結合の経営戦略』で、日本企業による100億円超、255件の海外M&Aを調査し、成功と失敗の要因を探った松本茂氏は、アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)とグーグルの買収に学ぶところが大きいと述べる。
『海外M&A 新結合の経営戦略』から、その趣旨を抜粋・編集してお届けする。
M&Aの成否をどう測るか
日本企業が海外での買収に本格的に取り組み始めたのは1985年のプラザ合意以降で、まだ40年弱の歴史しかない。
買収後の経営成績を見て成否を検証できるデータがようやく揃いつつあるという状況で、海外M&Aについて有用な仮説や理論を構築するのはまさにこれからの作業である。
M&Aの研究はこれまで、おもに欧米において、ファイナンスの分野で買収と株価の関係に注目して、買収が株主に利益をもたらしたかという観点から成否を検証してきた。
その代表的な手法であるイベントスタディは、買収公表前後の買収企業株主と被買収企業株主、そして株主全体の短期株価超過収益を測定することで、買収の成否を検証する。
この手法は、被買収企業株主のパフォーマンスを測定するには適しているが、買収企業の成否を判定するには必ずしも適切ではない。
なぜなら、買収の成否は、買収企業が対象会社の経営を始めてからでないと判断できず、買収公表時における株式市場の期待や失望と実際の経営成績は異なることがあるからだ。
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