「月に1件」買収してきたグーグルM&A戦略の威力 グーグル、GMから企業買収の最大の効果を学ぶ

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20世紀のGM、そして、21世紀のグーグルはともに買収を繰り返して業界の主導権を握った。しかし、企業が寡占を形成し始めると、市場における競争制限の調査に規制当局が乗り出すことになる。

20世紀前半にGMが買収で航空輸送と航空機製造を始めると、アメリカ政府は、GMが自動車、鉄道、バスに次いで航空業界でも寡占を形成することを警戒し、1934年に新航空郵便法を制定して、航空会社と航空機メーカーの同時保有を禁じた。

グーグルに対しても現在、アメリカ司法省がデジタル広告市場の支配を巡り提訴している。

企業にとって寡占は競争の結果であるが、市場構造が寡占に近づくと、寡占企業による新たな買収が競争を制限することに当局は警戒する。

大型買収は「生き残りを懸けて」

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しかし、自社事業の永続を考えることは、将来的な脅威や挑戦を探知することであり、それに備えることは経営者の使命でもある。

大型の買収を実行するときに「生き残りを懸けて」と話す企業経営者は多い。

言い換えれば、寡占の一角にとどまることができなければ、どの業界にあっても企業の存続は危ういということだ。

よって、市場で寡占を目指す企業行動は企業経営者の本能で、そのために買収を試みることに躊躇する必要はない。今後はさらに、買収が勝者と脱落者を定めていくことになる。

松本 茂 京都大学経営管理大学院特命教授、城西国際大学大学院教授

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まつもと しげる / Shigeru Matsumoto

神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。PwCディレクター、英HSBC投資銀行本部長、同志社大学大学院准教授などを経て、現職。20年にわたり、M&Aアドバイザーとして、米国や中国など20カ国50を超える海外企業とのクロスボーダー案件に助言。著書に『海外企業買収 失敗の本質 戦略的アプローチ』(東洋経済新報社、2014年、第9回M&Aフォーラム正賞受賞)。2020年、京都大学経営管理大学院より優秀教育賞受賞。

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