116兆円超の巨額な買収金額
今世紀の19年間に日本企業が実行した海外M&Aは8833件、買収金額の合計は116兆6541億円に上る。慎重と評されることが多い日本企業の経営であるが、海外M&Aには大胆にその経営資源を投入してきた。
それでは、この海外M&Aは、利益成長に結び付いているのだろうか。買収の件数は年々増加しており、案件の規模も大きくなったことから、買収の成否は企業業績に影響を及ぼすことになる。
本書第2章で示したとおり、日本企業が本格的に海外M&Aに取り組み始めた1985年から2001年の草創期に実行した大型買収116件では、51件が失敗で、成功は9件だった。
そして、2002年から2011年の発展期の買収139件では、失敗が27件、暖簾減損計上が17件、そして成功が17件だった。
草創期と比較すると、発展期の買収は失敗が減少し、成功が増えて成否割合は改善した。いまだ失敗の数は多いが、大日本住友製薬やアドバンテストなど、今世紀に入って大型買収に挑み、海外売上高比率と営業利益率の両方を同時に伸ばした企業も出現している。
日本企業の海外M&Aは経験を積んで、新たな段階に入った。
買収は企業経営の中でどのような役割を果たすべきなのか。そして、その成功モデルをいかに描くことができるのか。
企業が買収を発表すると買収金額や株価などに目を奪われがちだが、本書では、買収が新たな事業の結合である点に着目し、学術理論の力を借りて買収の役割を問い直した。
シュンペーターは『経済発展の理論』の中で、資本主義経済を循環と発展の2段階で捉え、企業家による非連続な新結合の遂行が、経済の発展をもたらすと説いた。
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