五輪開催でも「侍ジャパン」の存在意義が薄らぐ訳 築き上げた国際戦略がコロナの影響で瓦解

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相変わらずMLB球団のオーナーたちは主力を出し渋ったが、それでも野手はバスター・ポージー(ジャイアンツ)、ジャンカルロ・スタントン(当時マーリンズ)などスターが出場し、エース級の先発投手は出なくてもルーク・グレガーソン(アストロズ)、パット・ネシェック(フィリーズ)など一線級の救援投手が出るようになった。

さらに限定的に投手を起用する「指名投手枠」が設けられ、J.A.ハップ(当時ツインズ)などの先発もスポット参戦した。

準決勝で日本はアメリカに1-2で惜敗したが、トップクラスの救援投手の継投で日本を退けたアメリカは本気モードであり「野球の本家」のプライドをかけていた。

2019年8月末、韓国で行われた「WBSCU18ワールドカップ」。佐々木朗希、奥川恭伸など現在プロで活躍している若手選手が「侍ジャパン」のユニホームでプレーした(写真:筆者撮影)

紆余曲折を経てWBCは4年に1度の「野球のワールドカップ」として定着した。その間の年には、国際野球連盟(IBAF)の後継団体である世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する「プレミア12」が開催されるようになった。

国際的な野球普及は道半ばであるにせよ、野球の国際戦略には一定の道筋がついていた。

コロナで野球の国際戦略が瓦解

しかし新型コロナ禍によってこの国際戦略は瓦解した。MLB、MLB選手会は2021年に予定されていた第5回WBCの中止を発表。改めて2023年に開催するとした。そうなれば2022年には各大陸での予選が始まることになる。しかしWBCの今後の展開はまったく不透明と言ってよい。

新型コロナ禍でMLB各球団は大きな経済的打撃をこうむった。各球団のオーナーにとっては球団の立て直しこそが急務だ。

バド・セリグの後にコミッショナーに就任したロブ・マンフレッドは、セリグと比較すると国際戦略には消極的な印象だ。むしろ「時短」のためにルールを改正するなど国内の人気回復に力点を置いているような印象だ。

もともとアメリカン・スポーツは「内向き」な性格が強い。世界のマーケットよりもまず、アメリカ国民が関心を持つコンテンツにすることに熱心だ。ましてや新型コロナ禍で試合そのものが制限を受けた中で、自国民の関心を取り戻すことが最優先になるのは仕方がないことだ。

たとえ2023年にWBCが開催されたとしても「世界どころではない」MLB球団は、さらに消極的になるだろう。

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