五輪開催でも「侍ジャパン」の存在意義が薄らぐ訳

築き上げた国際戦略がコロナの影響で瓦解

東京オリンピック自体の開催の可否が論じられているが、五輪野球競技の代表チームは、何とかそろいそうではある。しかし、野球トップチームの国際大会で確定しているのはここまでだ。以後の予定は不透明感が漂っている。

野球は北米、カリブ諸国と東アジア圏ではメジャースポーツだが、それ以外ではほとんど行われていない。世界的に見れば百数十カ国で人気スポーツになっているサッカーやバスケットボールに比べればマイナースポーツだ。

WBCが創設された経緯

MLBのバド・セリグ前コミッショナーは、このことに大きな危機感を抱いていた。野球は「北米4大スポーツ」の一つではあるが、NBA、NFLが若い世代の人気を得る中でMLBは「オールドボールゲーム」であり、ファンの高齢化が進んでいた。

これを打開するには、世界市場に進出するしかないと、セリグ前コミッショナーは、中国、ヨーロッパ、オーストラリアなどに資金援助を行い、プロリーグを創設。また、こうした地域からの選手をMLB傘下に積極的に受け入れた。

さらにセリグ前コミッショナーはサッカーのワールドカップに相当する国際大会を創設した。これが「ワールド・ベースボール・クラシック=WBC」だ。これまでも国際野球連盟(IBAF)主催の「野球ワールドカップ」が開催されていたが、アマ選手がメインだった。MLBはIBAFに出資しワールドカップに代わってWBCを創設。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、アメリカ大陸のトッププロ選手による世界大会へとステージアップさせたのだ。

ただひざ元のMLB球団のオーナーたちは、コミッショナーの意図は理解するものの、選手の派遣は躊躇した。FA制度の導入後、有力選手は1億ドルを優に超える複数年大型契約を結ぶようになった。そういう選手がMLBとまったく関係のないWBCに出場して負傷しプレーできなくなれば、球団は大きな資産を失うことになる。

2009年の第2回WBCで当時レッドソックスの松坂大輔は日本代表のエースとして大活躍しMVPに輝いたが、MLBに復帰後成績を大きく落とした。松坂は2006年にポスティングシステムで入団したが、レッドソックスは松坂が所属していた西武ライオンズに5111万ドルを支払った。

また松坂とは6年5200万ドルの契約を結んでいた。総額1億ドル以上で獲得した松坂だったが、以後、2桁勝利を挙げることなく退団した。

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