歴史上の営みに学び、自分の生き方を考える--『幕末維新に学ぶ現在』を書いた山内昌之氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)に聞く
--注目は若手ばかりではない?
久留米の神官、真木和泉(まきいずみ)を入れておきたい。当時ではもう老境だが、絶対ひるまず、逃げない。理想に生きた。最後は、若者だけを犠牲にせず、自刃している。「形は足利尊氏でも、心は楠木正成ならばよい」という有名な言葉を残している。
もう一人、幕臣の小栗忠順(おぐりただまさ)。小栗は三河以来の直参旗本の名門に生まれながら、政治的力量は勝海舟に匹敵する力を持つ。財務にも明るく、ロシアとも談判する。奉行となった数も異様に多い。しかも横須賀製鉄所(造船所)を残し、国家のすべき事業は何かを知っていた。日露海戦の勝利は横須賀製鉄所のおかげと東郷平八郎も感謝している。
--さらに絞ってベストスリーと言えば。
あえて言えば、小松、小栗、山尾としておこうか。
--週1回の新聞連載は今も続いています。
2009年3月からのほぼ1年分をこの本に収録。ネタが尽きる、あるいは適当な人が思い浮かばなくなるまでは続けたい。
(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2010年5月22日号)
やまうち・まさゆき
1947年生まれ。北海道大学文学部卒業。カイロ大学(エジプト)客員助教授、米ハーバード大学客員研究員、政策研究大学院大学客員教授など歴任。専攻はイスラーム史・国際関係史、中東イスラーム地域研究。サントリー学芸賞、吉野作造賞、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞ほか受賞多数。
『幕末維新に学ぶ現在』 中央公論新社 1890円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら