世界初「サイボーグ化した男」に日本人が学ぶこと

危機を乗り越える「ネオヒューマン」の希望の力

作家の乙武洋匡さんと、年に1回ほどゆっくり話す機会がある。ご存じのように彼は両腕と両脚がない状態で生まれ、つねに電動車いすを使い、さまざまな活動に介助が必要な状態で暮らしている。そうした日々について彼が22歳のときに書いた『五体不満足』は、600万部のベストセラーになった。

厳しい生活であろうに、彼からいつも感じるのは「希望」だ。世界37カ国の放浪、サッカーチームのGM、ニュースキャスターなど、身体のハンディを感じさせずに新しいチャレンジを続けている。ピーターと同様に、ロボット技術を用いた義足をつかって歩行することにも希望をもって取り組んでいる。

ピーターも同じだ。ALSの診断をうけても絶望せず、チャンスと捉えてつねに前向きに、希望をもって、自分の人生を生きている。彼は気管切開の手術を受けて、声を発することが永遠にできなくなった。声が出せなくなる前に行われた最後のスピーチでは、最初は悲壮感を漂わせていた聴衆の気持ちを前向きに変えていった。

コロナ禍によって、多くの人々が不自由を強いられている。飲食業や宿泊業に関わっていた人々では仕事を失った方も少なくない。空前絶後の事態において、もちろん政府や行政がもっと強いリーダーシップを取るべきだ。

ただ同時に、より困難な状況にある人が、不思議なほどのポジティブさで生きていることも覚えておきたい。1人ひとりが変化を強いられる時代の中で、いかに「希望」を保てるかがカギを握っている。

Jリーグと東北復興に見る「社会のアップデート」

個人だけでなく、社会そのものもアップデートが迫られている。

私はJリーグの理事を務めている。サッカーのサポーターたちは毎週のように、応援しているクラブが戦うスタジアムに集い、仲間と肩を組みながら大きな声援を送り、また観戦後は近くの飲食店でお酒を片手に語っていた。コロナによって、こうしたすべてができなくなった。

村井満チェアマン率いるJリーグの動きは素早かった。まずは日本野球機構(NPB)と手を組み、感染症の専門家との合同会議を繰り返して対策を練った。無観客試合への対応、選手への定期検査、観戦時の感染対策徹底、飛沫感染のシミュレーション。

手を尽くした結果、有観客1000試合でクラスターを発生させなかった。その背景に、Jリーグの「スボーツの火を消さない」という強い決意があった。

次ページ復興を「乗り越えられる、乗り越えられない」を分ける差
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