山のような服を罪悪感なく処分できる驚きの方法 本当のお気に入りだけが残る「追試」の威力

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なーんだ、これでよかった……のだろうか?

正直に言えば、心に一点の曇りもなくそう言い切ることができない自分がいた。

確かに心は平穏。でもそれは言い換えれば、心が浮き立つことがないということでもある。私、本当にこんなんでいいのだろうか?

今さらモテたいなどと色気づくトシでもないが、それににしてもまだ50歳だし、出家したわけでもないし、普通にシャバ世界を生きる人間としては、平穏を楽しんでいたらいつの間にやら「外見に一切構わない人」になっていたというのもそれはそれで心外である。

だってさ、そもそも私は別におしゃれをやめたいわけじゃないんですよ。今も昔と同じようにおしゃれは大好きだ。ただ服を減らしただけなんです! と、本当は会う人会う人に言って回りたい。

オシャレ「だった」稲垣さん?

でもそんなわけにもいかないし、人様は一体こんな私のことをどのように見ているのだろう……? と人知れず悶々としていたある日、この服をがっさり減らした顛末について元同僚と話をしていたら、彼女がこんなことをのたもうた。

「そう私、びっくりしてたんですよ。あのオシャレだった稲垣さんがって!」

なぬ? オシャレ「だった」? 過去形? じゃあ今はどうなんだ? やっぱり私、そんなふうに見えてたのか? 外見に構わない人になったと? いやいやいや違うんですー。

しかしそんなこと口でいくら言ったとて詮無いこと。人様が自分をどう見ようとも自由。私はまちがいなく、彼女の目には客観的にそう見えているのだ。言わんや、他の人をや。

私の気持ちは再び、暗く沈んだのであった。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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