感染症対策のプロが警鐘、東京五輪「7つの大問題」 「何が何でも五輪開催」はあまりに危険だ

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懸念2:日本の低いワクチン接種率

タン氏は「ワクチンは100%効くものではない。ワクチンはウイルス感染からすべてを守ってくれはしない」と指摘する。

そのうえで、「ワクチンは感染者からの感染拡大を防ぐためには、限られた効果しか持たない。なおかつ、日本では7月の大会開催までに人口の50%以上がワクチンを接種できるとの望みが全くない状況だ。何万に及ぶ健康なボランティアに優先的にワクチンを接種し、営利目的のスポーツイベントのために協力させることができるか。それは倫理上適切かどうか日本の判断を問うことになる」と指摘する。

世界のワクチン接種状況を追跡するブルームバーグの「ワクチン・トラッカー」の5月18日時点のデータによると、日本で少なくとも1回の接種を受けた人の割合は3.5%にとどまり、世界122位となっている。先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中では最下位層に陥っている。

懸念3:ジムやスポーツ施設は感染の温床

タン氏は「韓国では、ジムやスポーツ施設での感染拡大が多数確認されてきた」と指摘する。

日本のプロ野球でも最近、選手たちの間で感染が目立っている。スポーツ関連施設がそもそもハイリスクな場所であり、感染拡大の温床になりうるとの指摘は重い。

懸念4:海外選手らの3日間の隔離は不十分

プレーブックによると、選手や大会関係者は入国翌日から3日間は自室で隔離される。ただし、選手は陰性の証明など一定の条件を満たせば、入国後すぐに練習できることになっている。

これについて、タン氏は以前から筆者の取材に対し、「韓国でも渡航者が到着時には検査で陰性だったが、隔離終了前には陽性と判明した感染例がいくつも出てきている。14日間の隔離がないことは、私には危険に思える」と指摘。「3日間の隔離では感染の潜伏期をカバーできない」と警告する。

水際作戦はウイルスの侵入を遅らせることはできるが、撃退は困難だとされている。特に日本の水際対策は21日間の隔離期間を義務付けるシンガポールなどと比べ、ザルと指摘されている。3日間の隔離で本当に大丈夫だろうか。

懸念5:頻繁なマスク交換などによる効果減

タン氏は「マスクは限定的な感染防止になる」と指摘したうえで、「日本の7月は1年のうちで最も湿度が高い月になる。暑さ指数は34.9度に及ぶ。エアコンがかなり利いた場所でない限り、選手たちは最低でも1、2時間につき1回はマスクを交換しなくてはいけなくなるだろう」と注意を促す。
湿度の高い猛暑の下、熱中症予防は必須だが、頻繁にマスクを交換すればそのぶん、呼気は漏れる。感染対策の効果減少が懸念される。

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