新型コロナウイルスとの厳しい戦いが続き、3度目の緊急事態宣言が発令されている中、国際オリンピック委員会(IOC)や政府、都などは7月下旬から開催される東京五輪・パラリンピック大会を強行開催しようとしている。「パンデミック禍でも五輪強行」「何が何でも五輪開催」の姿勢を決して崩さない。
しかし、東京オリパラ大会には海外から選手1万5000人を含め、コーチや大会関係者ら最大10万人強の参加が見込まれている。仮に無観客で実施したとしても、これに8万人に上る大会ボランティアや国内のメディア関係者らが加わり、何十万人が都心に集まりかねない。日本のワクチン接種が遅れる中、大会を通じて東京が変異株の見本市のようにならないか。
コロナ禍での五輪開催の可否を見極めるポイント
感染拡大が心配される中、韓国・平昌冬季五輪組織委員会の医務専門委員を務めたタン・ヒョンギョン氏は、東京オリパラの感染対策や大会期間中の行動ルールをまとめた選手と関係者向けの「プレーブック第2版」(4月28日公表)を読んだうえで、7つの懸念を示した。
タン氏は、ソウルにあるミズメディ・ウィメンズ病院の内科医を務め、韓国の新型コロナウイルス専門家として知られる。韓国や中国といった内外の数多くのメディアにも出演中の国際派で、その指摘は傾聴に値する。コロナ禍での五輪開催の可否を見極める重要ポイントとして紹介したい。
タン氏は「私の最大の心配事は、現在の病原体診断をくぐり抜ける変異株が出現することだ。現在の検査で確認できない変異株が出現したらいったいどうなるのか。それは健康で若い選手の間で無症状感染を起こす一方、子どもやお年寄りといった脆弱な人々の間では重病や死をもたらす」と警鐘を鳴らす。
「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はこうした変異株を『甚大な被害が想定される変異株』と呼んでいる。鼻咽頭や唾液のPCR検査をできる限り実施しても、新型コロナウイルスが偽陰性を生じさせるほど十分に変異してしまえば、それらの変異株が世界中に再び拡散してしまう。そうなれば、東京五輪は国際的なスーパースプレッダー(超感染拡大)イベントとして語り継がれることになりかねない。このように想像できるということは、十分に起きうることなのだ」と指摘する。
福島第一原発事故に象徴されるように、日本は過去に最悪のシナリオを十分に想定せず、大規模な被害に見舞われてきた痛い経験がある。タン氏の指摘するような新たな変異株の脅威を東京五輪でもしっかりと認識する必要があるだろう。
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