感染症対策のプロが警鐘、東京五輪「7つの大問題」 「何が何でも五輪開催」はあまりに危険だ

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「五輪大会の現場には、選手と大会関係者専用の診療所が設置され、必要な緊急医療サービスを彼らに提供する。しかし、込み入った複雑な医療サービスや、メディアやスポンサー関係者のためには、地域の病院を使わざるを得なくなる。スポーツに関連したケガのほか、不慮の事故による負傷、感染症、虫垂炎、心臓まひ、骨折といった医療問題が常に起きる」

五輪期間中には多様な医療ニーズが発生し、それに十分に備えなくてはいけなくなるとの指摘だ。

問題は、現に東京の医療提供体制が既に逼迫していることだ。直近の5月13日に開催された東京都モニタリング会議資料では、東京の医療提供体制については、4段階の中で一番厳しい段階にある「体制が逼迫していると思われる/通常の医療が大きく制限されていると思われる」と指摘されている。

IOCや日本政府、東京都は、感染がさらに拡大し、東京の医療提供能力が現在の大阪や兵庫のような医療崩壊に陥ったとしても、あくまで五輪開催を強行するのだろうか。国民の命より五輪が重いはずはない。感染拡大が止まらず、国民への医療提供体制が厳しい場合には、五輪中止をバッハIOC会長に要請すべきだろう。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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