「アマゾンを50年先取り」していた宝塚経営の実態 100年続く宝塚歌劇団のすごいビジネスモデル

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コロナ禍の厳しい環境のなかでも巣ごもり需要により業績好調の企業には、同じようにカスタマーエクスペリエンス志向の経営を実践している例が多く見られる。代表格がニトリと良品計画だろう。

業績好調なカスタマーエクスペリエンス志向の企業

事例①「お、ねだん以上。」ニトリ

ニトリの2021年2月期決算は、売上高が前期比11.6%増、営業利益は同28%増、既存店の売上高は10.4%増、来客数は12.8%増といずれも好調だった。ニトリは扱う商品の幅広さから、「ニトリに行けば何でもそろう」と考えるロイヤル顧客が一定数以上存在する。住関連商品については、アマゾンと同様に、購入前の認知の段階で、ニトリの存在が顧客の意識に刷り込まれているわけだ。

店舗に行き、自分のニーズに合った商品を購入する。コロナ禍でのニーズはどのようなものだったのか。ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長兼CEOは、巣ごもりという状況下で、「外出せずに楽しく過ごす方法を工夫するようになる」「もっと快適にしたい、すっきり整理したい、気分を変えて模様替えをしてみようと関心が向くようになる」と分析する。

顧客はニトリの商品の品質や価格だけでなく、それを使って、テレワークの自宅作業を快適にする、部屋の模様替えをするという経験価値を共創することに満足感を覚えた。

「お、ねだん以上。」とは、ニトリのキャッチフレーズだ。お値段以上のプラスアルファの付加価値を出すため、ニトリは商品企画から生産、販売までを自前で行う垂直統合モデルにより、「住まいの豊かさを世界の人に提供する」という理念の実現を目指す。その世界観に共鳴する顧客は、ロイヤル顧客となり、ブランドと伴走するようになる。

事例②「ムジラー」を抱える良品計画

ブランドの世界観への共鳴と伴走が、とりわけ顕著に表れるのが良品計画だ。良品計画も、2021年8月期の上期(2020年9月〜2021年2月)において、最終的な利益が前の年度の同じ時期の2倍を超えた。 

無印良品には、「い・ろ・は・す」と同様に、顧客が得る経験価値と価値共創プロセスが商品企画段階から事前に組み込まれている商品が少なくない。例えば、隠れたヒット商品としてSNSで話題になった「その次があるバスタオル」だ。タオルとして使い古したあと、特殊加工されたラインに沿って顧客がカットすれば、切断面がほつれることなく雑巾に生まれ変わり、有効活用できる。

ただ、無印良品の場合、経験価値や価値共創プロセスが事前に商品に組み込まれていようといまいと、ロイヤル顧客の多くは、無印良品の商品の購入、利用を通して、その世界観を自らの生活のなかで具現化すること自体に経験価値を感じているように思われる。「ムジラー(無印良品の熱狂的愛好家)」はその典型だろう。

良品計画のビジョンは、「『良品』には、あらかじめ用意された正解はない。しかし、自ら問いかければ、無限の可能性が見えてくる」。シンプル、自然、無名、誠実……といった言葉で表現される世界観を顧客1人ひとりが生活のなかでカスタマイズする。同じ構図はIKEAやKALDI、ダイソーをはじめとする100円ショップにも見られるだろう。

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