「アマゾンを50年先取り」していた宝塚経営の実態 100年続く宝塚歌劇団のすごいビジネスモデル

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コロナ禍でも業績を伸ばしている企業に共通する「経営学」とは(写真:Dean Mitchell/iStock)
日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の文字を見ない日はないが、ここ数年、もう1つ、「X」のつく用語として、日本でも注目されるようになった。「CX(カスタマーエクスペリエンス)」だ。
コロナ禍でも増収増益を実現したアマゾンも重要視する言葉だ。しかし、アマゾンよりはるか前、今から50年前にすでに日本で重視し、実践していた組織が「宝塚歌劇団」である。元宝塚総支配人で現在は経営学者である森下信雄氏が上梓した『宝塚歌劇団の経営学』は、それに気づかせてくれるという。アマゾンと宝塚歌劇団、一見なんの共通点もなさそうな2社の意外な共通点を、企業の成功事例を数多く取材してきたジャーナリストの勝見明氏が解説する。

アマゾンも宝塚も「CX」を重視している

「CX(カスタマーエクスペリエンス)」は、「顧客体験」もしくは「顧客体験価値」と訳される。「商品・サービスの利用における顧客としての体験」および「体験を通して得られる感覚的、心理的価値」を意味する。

『宝塚歌劇団の経営学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

アメリカでは2000年代に入って以降、企業の経営ビジョンに「最高のカスタマーエクスペリエンスを提供する」といった表現を見かけることが多くなってきた。なかでもカスタマーエクスペリエンス重視の経営を行う典型がアマゾンだろう。

「地球上で最も顧客を大切にする企業」を標榜し、稼いだ利益の大部分を商品価格の値下げ、新規事業や物流網事業など顧客の利便性向上につながる投資につぎ込む。コロナ禍でも巣ごもり需要の高まりを受け、大幅な増収増益を実現した。

カスタマーエクスペリエンスでは、「購入前→購入→購入後」というプロセスが重視される。アマゾンの場合、ネット通販の代名詞的に使われるように、購入前の認知の段階で、その存在が顧客の意識に刷り込まれている。

アマゾンでは、過去の商品検索や閲覧履歴、購入履歴などの顧客データから、顧客1人ひとりの趣味や嗜好に合いそうなカスタマイズされた商品情報が推奨(レコメンド)される。顧客はそれをもとにサーチコスト(情報収集や代案探索にかかる費用)をかけず、ニーズに合った商品を購入できる。

アマゾンに対する顧客のロイヤルティー(継続して利用しようと思う度合い)は、商品の価格・品質といった物質的価値だけでなく、このプロセスに対する「経験価値」への満足度の高さによって支えられている。

さらに、顧客のアマゾンでの購買行動がサイクル化すれば、アマゾンは1人ひとりの顧客から中長期的に収益が得られる。と同時に、顧客データはより充実したものとなり、レコメンドの精度は上がり、顧客が享受する経験価値も高まる。つまり、顧客自身が自らの購買行動により価値創造に加わる。ここに、アマゾンと顧客による「価値共創」という構図が生まれる。

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