「君の仕事はお茶入れじゃない」その一言が必要だ 女性への「無意識の偏見」を知り、行動変容へ
中には、技術系の開発部門のように理系大学院卒相当の知識が必要で、そもそも応募者に女性が少ないこともある。こうした分野のジェンダー・ギャップを解消するためには、学校や家庭でのジェンダー・バイアスも考慮しつつ、長期的な取り組みが必要で、企業だけに問題があるとは言えない。
「差別」という言葉に抵抗を覚えるなら、それは歴史と事実を知らないからだ。その場合は『男女賃金差別裁判 「公序良俗」に負けなかった女たち』(明石書店)を読んでほしい。
原告は女性労働者たちで被告は彼女たちの雇用主だった住友電気工業や住友化学。労働やジェンダーに詳しい法律家が弁護団となり、間接差別の問題を浮き彫りにし、和解を勝ち取った意義深い事例である。本書の働く女性たちの声を読めば、女性だけに適用される“30歳定年”など、現代の感覚では非常識な慣習に驚くはずだ。ちなみにどちらの企業も現在では「ダイバーシティ経営」を掲げている。
実際に訴訟まで至っていない、小さな性差別は数えきれない。
私が就職活動をした1996年のこと。就職に強いとされる大学の3年生で、男子学生の多くが銀行や保険会社など金融系企業の就職内定を得ていた。獲得した内定先を滑り止めにしつつ、商社やメーカーなどの採用試験を受ける人もいた。しかし、同じ大学・同学年でも、女子学生にそのような選択肢はなかったのだ。
当時の大手金融機関で女性総合職の採用は少なく、「今年は女性総合職を取らない」「男子百数十人、女子1人」なのはざらだった。同じ大学に女子学生が2割はいたから能力や専攻は理由にならない。
かつて「女性は事務職です」の時代があった
性差別的な採用は業界を問わず存在した。私が就職説明会に参加した不動産会社では、人事担当者が「女性は事務職です。男性は企画か営業です」と、参加した学生たちに面と向かって言った。私が「女性が営業を希望したらどうなりますか?」と質問したら、人事担当者は「女性は事務職です」と即答したのである。
その企業でペーパーテストを受けながら吐き気が込み上げてきた。能力や適性でなく性別で仕事内容を決められるのが嫌だったからだ。1986年の男女雇用機会均等法施行から10年後の話である。
とはいえ、私は幸運だった。探せば男性と同じ仕事・同じ賃金の就職先もあったからだ。私より10歳以上年上の女性弁護士は、東京大在学中「男子のみ」という求人票の山を見て絶望を感じ、企業就職を諦めて司法試験を受けたそうだ。日本企業が四大卒の女性を採用しないので、外資系を中心に試験を受けた人もいる。
もし、あなたの勤務先でもこうした過去があるなら、まずは真摯に反省してほしい。女性の役員や管理職が少ないのは、差別的なマネジメントの結果だと認めてほしい。そして長年、男性の補助と位置付けられた女性たちに、「時代が変わったから」と急に活躍を求めても、やる気がでるはずがないことも理解すべきである。
では、過去の人材マネジメントを反省し、今後は是正していくことを決めたら、女性リーダーは増えるのだろうか。
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