東芝のゴタゴタが映す「社長の器」の普遍的価値 サラリーマン社長の思考と行動の本質とは何か

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一方、目上の人に逆らわず同調し、同僚、部下を褒めて動かす協調・共感戦略により、駒を有利に進めてきた人もいる。パワハラが叫ばれる昨今では、このタイプのリーダーが増えている。同じく同調型の中には、時の権力者が誰かを見極める能力に長け、その人にだけに意識を集中させ気配りする、いわゆる「虎の威を借りる」政治家タイプも見られる。

この種の人は、往々にして、自分に有利と思われる有力リーダーには絶対服従するが、そうでない人には手のひらを返したように無愛想になる。筆者は、このような光景を何度か目の当たりにしたが、本人は、そのパフォーマンスにより、どれほど損をしているかが認識できていないようである。「策士、策に溺れる」とはよく言ったものだ。

損になるとわかっても上司に逆らうタイプは?

反対に仕事ができても要領が悪い人がいる。人気テレビドラマとなった『半沢直樹』ではないが、ときとして、損になるとわかっていても上司に逆らうタイプだ。たしかに、その正義漢の姿はドラマの主人公にはふさわしいが、当の本人は、現実社会で、その行動がどのような結果を招くかを十分に計算せず、「男気」と思い込み快感を覚えている節がなきにしにもあらずだ。そのシーンを見て痛快に感じている判官贔屓の視聴者も現実とはかけ離れた夢に酔っているのだろう。

他者と対立しなくとも、「経営者は孤独である」とよく言われる。人との繋がりを大切にし、その状態に快感を覚える人に対して、孤独な経営者は、自分の思い通りに主体的に行動する「個人主義者」であろうとする。個人主義=孤独、ではないのだが、個人主義思考が同調的日本社会では孤独につながりかねない。

孤独であることに美学を感じている「できる人」がいるのとは反対に、日本経団連会長を務めた御手洗冨士夫キヤノン会長のように「もともと団体プレーが好きですから」と強調するトップは多い。組織の長としての公式発言としては、こう言わないとまずいし、実際、朝、昼と役員が一堂に集まるキヤノンでは、団体プレーが実践されている。一方では、「一見無味乾燥に見える決算書や財務諸表の数字が、そのつもりになって見ると、なまじの小説よりはずっと面白いドラマに見えてきます」と語っているように「孤独な時間」を重要視し楽しんでいるようだ。

さて、孤独になった経営者は、何を最大目標にしているのだろうか。それは、「目標達成」である。終わり良ければすべてよし、となる。この特徴は、結果に至ったプロセスを重視せず結論を先に言う話法にも見られる。先に結論ありきという経営者は手段を選ばない傾向にあるので、当初の「意図された戦略」のとおり突っ走り、プロセスで問題が生じていても上手に軌道修正して新たな方向性を探る「創発的戦略」を展開せずに失敗してしまう。

なぜ、まちがっていても率直に非を認め、進むべき道を改めないのだろうか。東芝を上場廃止に貶めた不正会計問題にもこの性(さが)が関わっていたのではないだろうか。

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