東芝のゴタゴタが映す「社長の器」の普遍的価値 サラリーマン社長の思考と行動の本質とは何か
そのような中にあって、東芝は4月6日、イギリスに本拠を置く投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズから、7月上旬にも1株5000円で東芝株の公開買い付け(TOB)を行い、10月に上場を廃止する買収提案が飛び込んできた。車谷氏がかつてCVCの日本法人トップを務めていたことから、経営陣の間で「提案の背景が不透明だ」「利益相反の可能性があるのでは」という批判が出た。その結果、車谷氏は退任という形を免れるため辞任したと見られている。
業績が低迷すれば、「外様」であろうがなかろうが経営者は叩かれる。株主重視経営が定着してしまった現在において、上場企業は社外取締役以上に「物言う株主」の犠牲になることが懸念される。車谷氏は自身の経営方針に反旗を翻し退任を迫る「物言う株主」のプレッシャーを回避するため、いったん非上場にしようと考えたのだった。
「外様」である場合、後ろ盾になってくれる人が権力を保持している間は、とりあえず安泰だが、そうでなくなったとき、何か失態をさらけ出せば足を引っ張られる。それも、厳しく管理していた人は、「ほらみたことか」と下から強い反発を買う。その際、マスコミも周辺取材を積極的に行うので、民の声が悲劇をより暗いものにする。その情報に役員の過半を占める社外取締役が反応し疑心暗鬼となる。
闘争心を露わにするか表面的にソフトかの違いだけ
総じて、トップになるような人は闘争心(負けん気)が極めて強い。それを露わにするか、表面的にはソフトな雰囲気を装っているかの違いはあるが、心に鎧をまとっている。よって、競争の土俵に上がれば極めて攻撃的になる。必ず勝ちたいと思い、勝てば認められたいという承認欲求が強まる。他者に認められることにより快楽を感じるのである。これが、プライドの高さ、名誉欲という現象になって表れる。そこに、東芝のように「財界総理輩出」という歴史と企業文化が加われば、「より偉い人」として認められたいという名誉欲がさらに強くなる。
闘争心が強くプライドが高く名誉欲が強いという心理は、目立ちたがり屋で嫉妬深いという性格と表裏一体である。リーダーになりたがる人、人の上に立とうとする人は、自分よりも目立つ人に嫉妬心を強く抱く傾向も見られる。
西田氏は後任社長となった佐々木氏を当初は高く評価していたが、業績が悪化し始めると、部下に対して高圧的な佐々木氏に不満を持ち始めた。さらに、佐々木氏が内閣府経済財政諮問会議議員、経団連副会長などに任命され社外で目立ち始めると、記者会見のような公の場で批判するようになった。佐々木氏も西田氏の一言一言に強く反発し、ある記者会見では、アメリカ大統領選における公開討論さながらのガチンコ・シーンが見られた。この事件1つをとってみても、嫉妬心が強い「できる人」の心理が垣間見られる。
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