「ベンチャー創造協議会」が担う役割とは? 「産業の新陳代謝とベンチャーの加速化」を推進

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KDDI: 2011年にKDDI∞Laboを創設し、IT系の起業家を支援しています。渋谷ヒカリエの同社のフロアーの一部を公募で選定された起業家チームに提供し、同社の各事業部からのメンターと外部支援者が担当について3ヶ月間の支援プログラムが実施されます。起業家チームは、KDDIの経営資源やネットワークを活用しつつ、事業を立ち上げます。江幡智広Labo長は「ゼロから1を創り出すのはベンチャーが得意。このプロセスを大企業の経営資源で支援することで、双方にメリットがある。」と語ります。起業家のメンターとなったKDDI社員にとってもベンチャーとの協業で新たな活力が生まれています。

プラス: 国内の事務用品の市場が減少することに危機感を持ち、ベンチャーとの連携による新事業展開を強化しています。新事業担当の伊藤羊一VPによると、「ホワイトボードを提供します」をキャッチフレーズに、ベンチャーとの関係作りからはじめ、更に一歩踏み出して、印刷業界を革新するベンチャー「ラクスル」に出資したところ、その後、より多くのベンチャーの情報が集まるようになったとのこと。「スピーディーに検討する、シナジーを求めすぎない、カニバリゼーション(事業の食い合い)を気にしない、撤退ルールを決める」ことがベンチャーとの連携のポイントと同氏は言います。

ノーリツ鋼機: 写真処理機器の製造販売で世界トップシェアを誇っていましたが、デジカメの普及で市場が縮小する中、西本博嗣社長のもと第二創業としての新事業展開に挑戦しています。医療関係、シニア通販、植物工場、太陽光発電などのベンチャーに積極的に投資、M&Aをして、医療、食、シニアライフへの事業展開を実現し、業績はV字回復。冒頭のマッチングイベントでは、社長自ら「私たちの強みは、人・もの・金がそこそこあること(笑)。弱みとしては専門分野の人材がいないこと。だからこそ本気でやりたい「人」と組むのです。」とベンチャー経営者に連携を呼びかけています。

モーニングピッチ: トーマツベンチャーサポートと野村證券が大企業の新事業担当とベンチャーに呼びかけ、毎週、朝7時からプレゼンテーションの会合を開催しています。トーマツの斎藤祐馬氏等20代若手メンバーの企画からスタートし、当初は参加者は10名程度でしたが、現在では、毎週100人を超す大企業関係者が有力ベンチャー議論する熱気のあるイベントとなり、大企業に出前してのピッチイベントや地方展開も実現しています。

ベンチャー創造協議会の創設

しかし、上記のような先行事例がある一方で、経済産業省の実施した調査では、日本の大企業の多くが、ベンチャーとの連携を模索しつつも、実現していません。上場企業308社が回答したアンケートでは、出資、M&Aをしようとしても、ベンチャー企業が見つからない・出会いの場がない(47%)、ベンチャーをどう評価してよいのか分からない(45%)などの悩みが明らかになっています。多くの企業が外部との連携による新事業創出を摸索しつつも検討段階で止まっています。

一方、オープンイノベーションを標榜する欧米企業の多くがM&Aでベンチャーを積極的に取り込んで大きく成長しています。Oracle、Google、FacebookはベンチャーのM&Aによるエグジット先としても有名です。

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