「ベンチャー創造協議会」が担う役割とは? 「産業の新陳代謝とベンチャーの加速化」を推進

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成長戦略改訂版に掲げられた「ベンチャー創造協議会」は、このような背景のもと、現状の大企業とベンチャーとの連携を一歩進める、既存企業も含めて経済全体で新しい取り組みに挑戦する、という試みです。冒頭紹介したマッチングイベントのような取組みを拡大しつつ、オープンイノベーション推進を図ります。

「ベンチャーとは起業にとどまらず、既存大企業の改革も含めた企業としての新しい取組への挑戦である。「新しい力」で経済を再生する。」(ベンチャー宣言:ベンチャー有識者会議)という考え方に共感を持っていただける大企業、中堅企業、ベンチャー企業、ベンチャー支援者・支援機関などに、幅広く参加を募ります。

TOKYOイノベーションリーダーズサミットの参加大企業、日本経済団体連合会、経済同友会、新経済連盟、日本ニュービジネス協議会など経済団体からの参加企業、これからの成長が期待されるベンチャー企業などで、既存組織の屋上屋とならない緩やかな連合体をつくるという構想です。事業としては、大規模なマッチングイベントや、事業分野ごとにテーマを絞った交流会、人材育成事業などを開催します。現在、9月の協議会立ち上げを目指して、参加企業、団体の募集や基本的な枠組みの検討が進められています。

大企業発ベンチャーの創出

そして、ベンチャー創造協議会のもう一つの目的は、大企業からのベンチャーの創出です。

前述の経済産業省の調査では、大企業の多くが新規事業開発を重要課題としつつも、全体の7割以上が自社の実際の新規事業に不満を持っています。社内ベンチャー、新規事業提案制度を持つ企業は多いのですが、十分な成果が上げられていません。「企業の中に有効活用されていない技術資源が眠っている」という回答も46%にのぼります。大企業の担当者と話す中でも、共通の話題として次のような話が出てきます。

「当社では新規事業は正当に評価されない。売上数兆円の企業で数億円の新規事業を創っても昇進には役に立たない。」「新規事業に取り組む際に、ある程度のリスクは認識してもらっても、基本的には失敗はマイナスと評価される。」「成功確率が1割以下というのが新規事業の実態だが、そんな確率だと言ってしまうと、よい人材や事業費がとれない。」

このような課題は、実は、古くから認識されています。経営学の大家ピーター・ドラッカー教授は、「イノベーションと企業家精神」の中で「既存の企業が企業家としてイノベーションに成功するには特別の努力を必要とする。既存の企業は、すでに存在する事業、日常の危機、若干の収益増へと、その生産資源を振り向けてしまいがちだからである。」と言っています。

また、ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は名著「イノベーションのジレンマ」の中で、業界をリードする企業が、競争の感覚を研ぎすまし、顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資し、それでもなお市場での優位性を失う理由として、既存事業の組織の枠組の中でイノベーションを創出しようとするからであると警告しています。

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